用途発明とは?特許・実用新案審査基準で説明

問:用途発明とは?

Gemini 2.5 Pro:

「用途発明(ようとはつめい)」ですね。承知いたしました。

これは特に医薬品や化学の分野で非常に重要になる特許の考え方です。

一言でいうと、用途発明とは**「既知のモノ(物質)から、未知の新しい使い道(性質・効能)を発見する発明」**のことです。

「モノ」自体は新しくなくても、「その使い道」に発明としての価値を認める、という点が特徴です。

1. 用途発明の典型例:医薬品

用途発明が最もよく使われるのが「医薬品」の分野です。これは**「医薬用途発明」**と呼ばれます。

【例:既存の「胃薬」から「がん治療薬」が生まれたケース】

  1. 前提:ある会社が「成分X」を発見し、「胃の痛みを抑える効果(効能)」を見つけました。そして、「成分Xを含有する胃腸薬」として特許を取り、販売していました。

    この時点で、**「成分X」という物質自体は、すでに世の中に知られている「既知の物質」**となります。

  2. 新しい発見:その後、別の研究者が「成分X」を研究し直していたところ、偶然にも「成分Xには、特定のがん細胞の増殖を強力に抑える効果」があることを**“初めて”**発見しました。
  3. 特許の成立:「成分X」という物質自体は既知(公知)です。しかし、「がん治療に使える」という**新しい使い道(効能=用途)**は、誰も知りませんでした。

    この「新しい効能の発見」には発明としての価値があるため、この研究者は以下の特許を取得できます。

【請求項1】

成分Xを有効成分として含有する、抗がん剤。

(または「~がん治療用医薬組成物」など)

この特許は「物質」そのものではなく、「抗がん剤」という特定の「用途」に限定された権利となります。


2. なぜこれが特許として重要なのか?

もし用途発明が認められないと、どうなるでしょうか。

「成分X」はすでに胃薬として知られているため、物質特許は取れません。

もし「抗がん作用」という素晴らしい発見をしても特許で保護されなければ、製薬会社は莫大な費用がかかる臨床試験(治験)を行ってまで、その薬を「抗がん剤」として国に承認申請(薬事申請)しようとはしなくなります。

つまり、「既知の物質の新しい効能を発見した」という努力と投資を特許で保護することで、新しい治療法の開発(創薬)を促進する、という重要な役割があるのです。


3. 医薬以外の例

  • 農薬: 既知の「殺虫剤A」に、実は「特定の雑草だけを枯らす効果(除草効果)」があることを発見した場合。→ 「殺虫剤Aを有効成分とする除草剤」として特許が取れる。
  • 化学物質: 既知の「プラスチック添加剤B」に、実は「金属のサビを強力に防ぐ効果(防錆効果)」があることを発見した場合。→ 「プラスチック添加剤Bを含有する防錆剤」として特許が取れる。

結論

用途発明とは、

  • モノ(物質): 既知(新しくない)

  • コト(使い道・効能): 未知(新しい)

この「コト(使い道)」の発見に価値を見出して特許権を与える仕組み、とご理解いただくと分かりやすいかと思います。

質問:用途特許が特許として認められるということは、特許法かなにか法律の条文になってる?なってない場合、なにかしら公的文章の記述ある?

Gemini 2.5 Pro:

いいえ、実は「用途発明」という言葉や、それが特許になるという規定は、特許法の条文(法律本文)には直接書かれていません

特許法は、非常に大枠のルールだけを定めています。

  • 特許法の第2条第1項で「発明」とは何か(自然法則を利用した技術的思想の創作)を定義し、

  • 同条第3項で、発明には「物」の発明と「方法」の発明の2種類がある、と定めているだけです。

「用途発明」は、これら法律の条文をどのように解釈・運用するかという実務上のルール(解釈論)として確立されてきたものです。


📚 公的な記述は「審査基準」にあります

ご質問の「法律ではない、公的な文章」として、まさにそのものがあります。

それは、特許庁が公開している**「特許・実用新案審査基準」**です。

これは、特許審査官が特許法という法律を具体的にどのように解釈し、審査を運用するかを定めた**公式のガイドライン(マニュアル)**です。

この「審査基準」の中に、用途発明の取り扱いが明記されています。

審査基準における「用途発明」の扱い

審査基準では、「用途発明」という独立したカテゴリーを設けているわけではありません。

その代わり、例えば医薬の用途発明(医薬用途発明)は、以下のように扱うと定めています。

特定の効能(例:抗がん作用)に基づいて特定された医薬は、「物の発明」として扱います。

【解説】

これは非常に重要なポイントです。

  • 「成分X」という物質そのものは、すでに胃薬として知られているため、「物」としては新規性がありません。

  • しかし、「抗がん剤」(=抗がん作用という”用途”に限定された物)というくくりで見れば、それは新しい「物」(の発明)として扱いましょう、というルールを定めたのです。

このように、用途発明は「新しい使い道(用途)によって限定された**『物の発明』**」として、特許法第2条第3項の「物の発明」に当てはめて解釈・運用されています。


結論

  1. 法律(特許法)には書かれていない:「用途発明」という言葉も、それを特許とするという直接の条文もありません。
  2. 公的文書(審査基準)に書かれている:特許庁の「特許・実用新案審査基準」が、用途発明を「(用途によって限定された)物の発明」として取り扱う、という具体的な運用ルールを定めています。

この「審査基準」こそが、用途発明の特許性を実務上支えている最も重要な公的文書となります。