過敏症とアレルギー
リッピンコットの免疫学の教科書には、Hypersensitivity ReactionsとしてタイプIからタイプIVまでが説明されていました。Hyptersensitivity reactionという言葉は自分は聞きなれないものだったので、これはアレルギーのことなのか?どのタイプかがアレルギーのことなのか?と混乱しました。I型アレルギー~IV型アレルギーという分類もあるので、同じものかなとも思い確認しておきます。Janeway’s immunobiology 10th editionの第14章(663ページ~)Allergic Diseases and Hypersensitivity Reactionsを読むと、
inherently harmless ‘environmental’ antigens such as pollen, food, and drugs induce hypersensitivity reactions known generally as allergic reactions.
と説明されていました。本来無害な環境要因に由来する抗原(花粉、食べもの、くすりなど)が引き起こす過敏な反応は、一般的にアレルギー反応として知られているとのことです。つまり、hypersensitivity reactionsとアレルギーは、同じものでした。
アレルギーの種類
4つの型にアレルギーを分類したのは、P.G.GellさんとR.R.A.Coombsさんだそうで1960年代のことだそうです。4種類は、あるるぎーが起こるメカニズムの違いによって分類されています。
- I型アレルギーは、IgE抗体と肥満細胞が関与するもので即時型。
- II型アレルギーはIgG抗体と細胞傷害性反応が関与するもの。
- III型アレルギーはIgG抗体と免疫複合体形成が関与するもの。
- IV型アレルギーは、エフェクター細胞(リンパ球やミエロイド系細胞)が関与するもの。
この古典的な分類は、今でもよく使われているとのことです。
Hypersensitivity Reactionsとアレルギーが同じものか違うものかでなぜ悩んだのかというと、(医学ではなく)一般の人がよく口にするアレルギーという言葉は主としてI型過敏症であることが多いからでした。
一般的なアレルギーはⅠ型をさしている。(アレルギーとは? Fujimoto Medical System)
アレルギーの分類は、メカニズムの違いで理解できますが、実際的には症状が生じるまでの時間や検査方法を覚えておくほうが役立ちます。
アレルギー反応の分類法としては、免疫反応による組織傷害の機序から分類したGellとCoombsの分類が使われることが多い。本分類はその反応に関与する抗体や細胞の違いにより分類されるが、現象的には皮膚反応出現にかかる時間と反応の性状により分けられる。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ型は血清抗体が関与する体液性免疫(humoral immunity)、Ⅳ型は感作リンバ球による細胞性免疫(cellular immunity)と大別される。(第1章アレルギー総論)
アレルギーの種類
免疫アレルギー反応(生体に不都合な過剰反応)の様式
Ⅰ型(即時型): 15 ~ 30分で発現。肥満細胞とIgEが関係。重症型はアナフィラキシーショックとなる。代表疾患は 蕁麻疹、花粉症、アトピー性皮膚炎、蕎麦・ナッツ・蜂毒アレルギー、喘息。
Ⅱ型(細胞障害型): 細胞抗原に対するIgGやIgM抗体反応による。代表疾患は天疱瘡・類天疱瘡、溶血性貧血、重症筋無力症。
Ⅲ型(免疫複合体型): IgG、IgMあるいはIgA抗体と抗原が結合した免疫複合体が組織に沈着し、補体を活性化し臓器障害が発生する。代表疾患は糸球体腎炎、SLE、関節リウマチ、血管炎。
Ⅳ型(遅延型): 48時間が反応のピーク。感作Tリンパ球が主役でツベリクリン反応もこれに基づく。 代表疾患は接触皮膚炎、薬疹、アトピー性皮膚炎。代表疾患は接触皮膚炎、薬疹、アトピー性皮膚炎。
参照元:https://www.tmghig.jp/hospital/department/surgery/dermatology/allergic-dermatitis/
Ⅰ型アレルギーはIgEが関与することで引き起こされるアレルギーである。IgEはTh2が産生するIL-4、IL-13によりB細胞がIgE産生細胞へと分化することで産生され、肥満細胞、好塩基球のFcεRⅠ(好酸球のFcεRⅡは低親和性のためここに含めない)に結合し、そこにアレルゲンが結合するとFcεRⅠが凝集し、ヒスタミン、ロイコトリエンC4、PAF、好酸球走化因子らが分泌(脱顆粒)され、アレルギー症状が発現します。‥
Ⅳ型アレルギーは抗体が関与する体液性免疫は関係なく、T細胞、マクロファージらが関与する細胞性免疫が深く関係するアレルギーである。Ⅳ型アレルギーは、Th1細胞(ヘルパーT細胞Ⅰ型)とTh2(ヘルパーT細胞Ⅱ型)のどちらを介するかで2つの経路に分けて考えることができる。 ・ Th1が関与する場合は、Th1の活性化→IL-2、IFN-γなどの産生→マクロファージや好中球、NK細胞による異物の処理の過程で起こる炎症を指しますが、Th2が関与する場合は、Th2の活性化→IL-5の産生→好酸球による異物の処理の過程で起こる炎症、というように同じ炎症でもその原因は異なっている。
参照元:https://kanri.nkdesk.com/hifuka/yougo27.php
薬剤アレルギー
- How sensitisation to the drug occurs, to what extent T cells are involved, and how the different pathologies are related to the symptoms of drug allergy are still unknown. https://thorax.bmj.com/content/55/suppl_2/S61
アレルギーと2型免疫応答
- allergic diseases are characterised by a skewing of the immune system towards a T-helper cell type-2 (Th2) phenotype https://erj.ersjournals.com/content/26/6/1119
- The majority of patients with AD, CRS and asthma involve, or result from, an overexpression of type 2 inflammatory pathways https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/all.14318
納豆アレルギー
- サーファーや漁師、疑うべき食物アレルギー 2023年02月03日 10:42 MedicalTribune 2004年に納豆アレルギー症例の存在を初めて報告(J Allergy Clin Immunol 2004; 113: 998-1000)した昭和大学皮膚科学講座主任教授の猪又直子氏 主要アレルゲンは納豆菌による大豆の発酵過程で産生されるポリガンマグルタミン酸(PGA) サーフィンなどのマリンスポーツ愛好家と納豆アレルギーの関係について、クラゲのような刺胞動物によるPGAの経皮感作であるとの仮説を立て、食物アレルギーを有する外来患者を対象に行動要因を調査した。その結果、納豆アレルギー患者の9割がマリンスポーツを行っており、特にサーフィン(84.6%)を趣味としていた(Allergol Int 2018; 67: 341-346)。
アレルギーが起きる原因
T 細胞は,B 細胞に抗体 を形成するように指令することになります.B 細胞が 形質細胞に分化して,主にIgE を産生すれば,Ⅰ型ア レルギー反応ですし,IgG,IgM を産生すれば,Ⅱ型, Ⅲ型アレルギー反応です.ヘルパーT 細胞が 細胞障害型T 細胞に指令すれば,Ⅳ型アレルギー反 応になります. ここで重要なのが,T 細胞です.‥ 細胞そのものの状態では,T 細胞が免疫不応状態にな るアネルギー(anergy)とアレルゲンに反応するT 細胞のクローンの消失(clonal deletion)がありま す
参考
- アレルギーポータル(厚生労働省)
- Type I Hypersensitivity Reaction July 18, 2022. StatPearls
- Type IV Hypersensitivity Reaction Khaled Marwa; Noah P. Kondamudi. August 14, 2022. StatPearls
- 遅延型アレルギー(食物過敏)とは ambrosia IgG抗体を調べる遅延型アレルギー検査は日本では10年前から弊社がご提供を開始