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発明の単一性とは

教科書を読んでいたら、「特許請求の範囲の記載が、発明の単一性の要件を満たさないことは、拒絶の理由であるが、異議理由及び無効理由ではない。 」 と書いてありましたが、なぜそうなるのかが、ちっともわかりません。AIに訊いてみました。

 

依頼:「特許請求の範囲の記載が、発明の単一性の要件を満たさないことは、拒絶の理由であるが、異議理由及び無効理由ではない。」の文の意味するところを中高生にもわかるくらいに、わかりやすく説明して。

Gemini 2.5 Pro:はい、これは「なぜか?」がわかるとスッキリします。その一文が言いたいのは、「発明の単一性は、単なる『事務手続き上のお願い』であって、発明の『価値(中身)』とは関係ないから」ということです。中高生にもわかるように、「学校のテスト」に例えてみます。

🏫 例え話:学校のテスト

発明の単一性」とは、「答案用紙(願書)の書き方ルール」だと思ってください。

学校のルールで、こう決まっています。

【ルール(発明の単一性)】

  • 答案用紙1枚(特許出願1件)につき、1科目(例:「数学」)の答えだけを書いてください。
  • 「数学」と「歴史」と「英語」の答えを、1枚の答案用紙にごちゃ混ぜに書いてはいけません。

1. なぜ「拒絶理由」になるのか?(審査官のチェック)

あなたは今、受験生です。

「数学」と「歴史」の答えを、1枚の答案用紙にごちゃ混ぜに書いて提出してしまいました。

採点する先生(=審査官)は、これを見てこう言います。

「こら! ルール違反だ。1枚に1科目って言っただろ! この答案用紙(願書)は受け取れない(=拒絶)!

「数学」と「歴史」で、ちゃんと答案用紙を2枚に分けて(=出願を分割して)出し直しなさい」

  • ポイント: これは、あなたの「数学の答え(発明の中身)」が間違っているから怒られたのではありません。「答案用紙の書き方(手続き)」がルール違反だから怒られました。

2. なぜ「異議・無効理由」にはならないのか?(ライバルのチェック)

さて、場面は変わります。

先生(審査官)は、そのごちゃ混ぜの答案用紙(願書)をうっかり見落として採点してしまいました。

そして、「数学」の部分だけを採点し、「100点満点だ!」として、「数学」の合格証(=特許証)をあなたに出しました。

【合格後(特許登録後)】

これを見たライバルの生徒(=一般人やライバル企業)が、先生に文句を言いに来ました。

  • ライバルの主張:「先生! あいつの答案用紙、ずるい! 『数学』と『歴史』をごちゃ混ぜに書いてましたよ! あんなルール違反の答案は無効です! 合格証(特許)を取り消してください!」
  • 先生(=特許庁)の反論:「いいえ、ダメです。合格証(特許)を出した後に文句を言えるのは、『答えの中身(発明の価値)』に関することだけです。例えば、『あいつの数学の答え、本当は間違っているぞ!(=新規性・進歩性がない)』という文句なら聞きます。『答案用紙の書き方が汚かった』とか『ルール違反の用紙だった』というのは、単なる手続き上のミス(事務処理ミス)です。数学の答え(発明)が100点満点であること自体は変わらないのだから、今さら手続きのミスを理由に合格(特許)を取り消すことはしません」

💡 まとめ

  • 拒絶理由
    • タイミング: 合格(特許)にする
    • チェックする人: 先生(審査官)。
    • チェック内容: ①手続きミス(答案の書き方)も、②中身の間違い(答え)も、両方チェックする。
  • 異議・無効理由
    • タイミング: 合格(特許)にした
    • チェックする人: ライバル(一般人)。
    • チェック内容: **②中身の間違い(発明の価値)**だけ。①手続きミスは、もう文句を言えない。

「発明の単一性」は①手続きミスに過ぎません。

だから、先生(審査官)は拒絶できるけど、ライバル(一般人)は後から無効にできないのです。

 

以上、Gemini 2.5 Proによる解説でしたが、実にわかりやすいですね。

【法律家独特の語法】特許出願に係る発明が、不特許事由に該当することは、拒絶理由、異議理由及び無効理由です。???

本屋でいろいろ知財検定2級の参考書を見比べて、知財検定2級のテキスト(秀和システム)が中身がしっかり詰まっていてしかもわかりやすいように思えたので、これを買いました。マンガで学ぶ系はどうでもいいマンガにスペースを割きすぎていてもったいないと思いましたし、公式テキストと銘打ったものをありましたがやたらスペースが多くて割高感がかなりありました。

家に帰って読んでいたのはいいのですが、これ日本語大丈夫?みたいな説明が出てきて混乱させられました。

「特許出願に係る発明が進歩性を有しないことは、拒絶理由に該当します。‥ 特許出願に係る発明が、進歩性を有しないことは、異議理由及び無効理由でもあります。」(33ページ)

とか、

「特許出願に係る発明が、不特許事由に該当することは、拒絶理由、異議理由及び無効理由です。」(40ページ)

などと書いてあります。特許を受けるためにはその発明が進歩性を有している必要があり、進歩性がないと特許審査官から拒絶されるのはよいとして、なぜ異議理由なの?異議って誰が誰に異議を唱えるの?と混乱させられました。

 

質問:特許出願に係る発明が、不特許事由に該当することは、異議理由です。 って教科書に書いてたけど、これ日本語としておかしくはないの?なぜ異議理由、というか異議理由って何?

Gemini 2.5 Pro:はい、ご指摘の通り、その一文だけだと少し硬く、法律初学者には不親切な文章に聞こえますね。日本語としては間違っていません。これは法律の教科書特有の「AはBである」という定義を述べた、非常にカッチリとした(硬い)表現です。もっと分かりやすく言えば、

「もし、審査官が見落として特許にしてしまった『不特許事由』(=本当は特許にすべきでなかった理由)があるなら、それは『異議理由』として使えますよ」という意味です。では、その「異議理由」とは何か、なぜ「不特許事由」がそれにあたるのかを解説します。


🔍 「特許異議申立」と「異議理由」とは?

まず、「特許異議申立」という制度の全体像を理解する必要があります。

1. 制度の概要

これは、「一旦、特許として登録されたけれど、その内容にもしかしたら問題があるかもしれない」という特許に対して、公衆(だれでも)が特許庁に「ちょっと待った!その特許、おかしくないですか?」と見直しを求めることができる制度です。

  • タイミング: 特許が登録され、特許公報が発行されてから6ヶ月以内
  • 誰が: 「何人も(だれでも)」
  • 目的: 審査官の見落としなどで誤って登録された「質の低い特許」を、早期に取り消すため(公衆審査)

2. 「異議理由」とは?

上記の見直しを求める際、「なんとなく気に入らないから」という理由ではダメです。特許法が「こういう理由なら、異議申立をしてもいいですよ」と定めた「正式なクレーム理由」のことを指します。


💡 なぜ「不特許事由」が「異議理由」になるのか?

ここが最大のポイントです。「不特許事由」とは、文字通り「特許にすべきではない理由」の総称です。審査官が審査の段階でこれを見つけたら、「拒絶理由(きょぜつりゆう)」として出願人に通知します。

【不特許事由の例】

  • 新規性がない(すでにある発明だった)
  • 進歩性がない(簡単に思いつく発明だった)
  • 発明ではない(単なる発見や、計算方法など)
  • 明細書の書き方が悪い(何をしたい発明か不明確)

【フローで見る】

  1. 審査段階:審査官「この発明、進歩性がないな(=不特許事由だ)」→ 「拒絶理由」として出願人に通知する。
  2. もし、審査官が見落としたら…審査官「うっかり見落とした!進歩性がないのに気づかずOKを出してしまった!」→ 特許として登録されてしまう。
  3. 異議申立の段階(登録から6ヶ月以内)世間の人々「おい、あの特許、本当は進歩性ないぞ!(=不特許事由だ)」→ これを「異議理由」として特許庁に申し立てる。

結論:

教科書が言っているのは、

「審査官が拒絶すべきだった理由(=不特許事由)は、そのまま、登録後に公衆がその特許を取り消すための理由(=異議理由)として使えますよ」

という、制度の根本的なルールを説明している文章なのです。

 

質問:前提として、変な特許が成立してしまっているというのがあるのね?

Gemini 2.5 Pro:はい、まさしくその通りです。特許庁の審査官も人間であり、膨大な数の出願を処理しています。そのため、どれほど優秀な審査官でも、以下のような理由で「本来は特許にすべきでなかった発明(=変な特許)」を見落とし、誤って特許にしてしまうことがあります。

  • 世界中のあらゆる文献(特に非特許文献や海外のマイナーな文献)を完璧に探し出すのは困難(検索漏れ)。
  • 特定の技術分野の微妙なニュアンスを誤解してしまう(判断ミス)。
  • 出願人が巧妙な表現で、既存技術との違いを大きく見せている場合に騙されてしまう。

特許異議申立制度は、まさにその「審査官の見落としによるエラー」を前提として設計されています。

「審査は一旦終わったけれど、世の中の専門家たち(公衆)の目でもう一度チェックしてもらおう。もし『変な特許』が紛れ込んでいたら、早いうち(登録から6ヶ月以内)に取り消してしまおう」

これが、この制度の基本的な考え方(趣旨)です。

 

質問:教科書の一文は、「特許出願に係る発明が、不特許事由に該当することは、拒絶理由、異議理由及び無効理由です。」ってものなんだけどさ、異議理由は、一般人が特許庁に文句をいうという文脈なんだね?で、拒絶理由は、逆で、特許審査官が判断するときの話ね?つまり、状況がバラバラなことを、1文にまとめて説明してたってこと?めっちゃわかりにくくない?この説明!

Gemini 2.5 Pro:はい、その通りです! めちゃくちゃ分かりにくいですよね!あなたの理解は完璧です。その一文は、特許法を勉強する人が最初につまずく「あるあるトラップ」です。

  • 拒絶理由: 審査官が(出願人に)使うNG理由
  • 異議理由: 一般人が(特許庁に)使う「待った!」の理由
  • 無効理由: ライバルが(特許庁に)使う「やっぱアレ無しで!」の理由

このように、「使う人」も「タイミング(状況)」もバラバラなものを、「不特許事由」という共通項だけで無理やり一文にまとめているから、混乱するんです。

🚗 なぜ教科書はこんな「分かりにくい」書き方をするのか?

それは、法律の教科書が「時間(プロセス)順」ではなく、「原因(法律要件)」で物事を整理するからです。その一文を、分かりやすく「翻訳」しなおします。

【教科書の翻訳】

特許出願された発明に「新規性がない」という『欠陥(=不特許事由)』が見つかったとします。この『同じ一つの欠陥』は、見つかったタイミング(状況)によって、呼び名と対処する人が変わるだけです。

  1. 審査官が審査中に見つけたら→ それを『拒絶理由』と呼び、出願を拒絶します。
  2. 審査官が見落とし、特許になった直後(6ヶ月以内)に “一般人” が見つけたら→ それを『異議理由』と呼び、異議申立ができます。
  3. 特許になった後(いつでも)に “ライバル企業” が見つけたら→ それを『無効理由』と呼び、無効審判を請求できます。

法律の教科書は、この①②③の状況を全部すっ飛ばして、「結論(原因)は同じでしょ?」という視点で書いているため、あのようなカオスな一文が爆誕するわけです。その分かりにくさに気づけたのは、あなたが論理的に物事を捉えようとしている証拠です。

 

質問:これ、自分が読んでいる教科書(単に誰かが書いた参考書であって、特許庁が出した公式の教科書ではないよ)の説明が下手なだけなんじゃないの?それとも、この業界では、この説明が普通なの??

Gemini 2.5 Pro:その両方です。

  1. 説明が下手(初学者に不親切)
  2. この業界では普通(専門家にとっては常識)

🎓 なぜ、この「普通」がまかり通るのか?

あなたが読んでいるのは「参考書」であり、法律の専門家が書いたものです。

法律の専門家は、物事を「プロセス(時間軸)」ではなく「要件(原因)」で分類する癖があります。

  • あなたの思考(=学習者・一般人の思考):「審査の段階」→「登録直後の段階」→「登録後の段階」(時系列で物事を整理したい)
  • 専門家の思考(=教科書の書き方):「原因が『新規性なし』の場合」→ 審査段階なら「拒絶理由」→ 異議申立段階なら「異議理由」→ 無効審判段階なら「無効理由」

    (原因・根拠で物事を整理したい)

教科書は、この専門家思考で書かれているため、「原因は同じ『不特許事由』でしょ? だったら呼び名が違うだけで全部仲間だよね」というロジックで、あの一文が書かれます。これは法律系教科書では「ごく普通のスタイル」であり、非常に効率的(に見える)書き方ですが、初めて学ぶ人にとっては地獄のような分かりにくさです。あなたが「分かりにくい」と感じた感覚は100%正しいです。その参考書は、辞書としては優秀かもしれませんが、入門書としては不親切なだけです。

 

以上が、AIとのやりとりだったわけですが、拒絶の説明の章の中で、いきなりまだ説明されていない「異議」や「無効」という言葉が書かれていたので、自分が混乱させられたのだということがわかりました。順序良く説明してほしかったですが、そうすると本があのコンパクトさにはまとまらないんでしょうね。

知財検定2級のテキスト(秀和システム)は、とりあえず一通り範囲をカバーして全体像を掴みたいこと、勉強したはしからクイズを解いて効率的に理解したい、テスト対策を能率よくやりたいと思って買ったのですが、同時に、もっと読みやすい、読んで楽しい教科書として、伊丹健次『特許講義録』というのも買っていました。こちらを見ると、「異議」(特許異議申立制度)や「無効」(特許無効審判制度)に関してもっと詳しい説明がありました。こちらはセミナーの内容をテキストにしたものみたいで、大判なのですが余白が適度でスッキリとしたレイアウトで、なにしろ1800円と専門書にしては非常に安かったので迷わず買いました。

弁理士試験は何歳まで合格可能?定年後の受験でも合格できるのか?年齢(年代)別合格率

質問:弁理士試験は何歳まで合格可能?定年後の受験でも合格できるのか?年齢(年代)別合格率は??

Gemini 2.5 Pro:結論から申し上げますと、何歳でも合格可能ですし、定年後の合格も十分現実的です。弁理士試験は、他の国家資格(司法試験や公認会計士)に比べて「合格者の平均年齢が高い」のが大きな特徴です。40代、50代、そして60代以上の合格者も毎年必ず出ています。具体的なデータ(近年の傾向)をもとに解説します。


📊 データで見る:年齢と合格の関係

特許庁が発表している統計(令和5年度など近年の平均的なデータ)を見ると、勇気づけられる数字が並んでいます。

1. 合格者の年齢層

  • 平均年齢: 約37〜39歳
    • 20代で受かる試験というよりは、社会人経験を経てから受かる人が多い「大人の試験」です。
  • 最高齢合格者: 70代後半(年によっては80歳近い方もいます)
    • 60代の合格者は毎年複数名いらっしゃいます。定年退職後の「セカンドキャリア」として挑戦し、見事合格されるケースは珍しくありません。

2. 年代別合格率(目安)

受験者数に対する最終合格率の傾向です(年度により変動しますが、概算です)。

年代 合格率の目安 特徴
20代 約 9〜10% 学生や専業受験生が多く、記憶力のピーク。
30代 約 6〜7% 仕事と両立する層。受験者数が最も多い。
40代 約 5〜6% 管理職など多忙な時期だが、実務経験でカバーする層。
50代 約 3〜4% 記憶力は落ちるが、忍耐力と理解力で勝負する層。
60代〜 約 1〜2% 数は少ないが、定年後の時間を活かして合格する猛者。

厳しい現実: 年齢とともに合格率(%)自体は下がります。これは主に「純粋な暗記力」の低下と、老眼などによる「事務処理能力(読むスピード)」の低下が原因です。


👴 定年後・高齢受験の「勝ち筋」

研究経験といった経歴がある人は、一般的な「高齢受験生」よりもはるかに有利な点があります。

1. 「丸暗記」ではなく「理屈」で戦える

若い受験生は「意味はわからないけど丸暗記」で突破しようとしますが、経験豊富な方は「なぜこの法律が必要なのか(立法趣旨)」を理解する力に長けています。論文執筆や研究助成の申請などで「論理構成」に慣れている人は、特に論文式試験での適性が非常に高いです。

2. 選択科目の免除(※前回のお話)

もし理系修士・博士等で選択科目が免除になれば、学習負担が2〜3割減ります。これは体力勝負になる年配受験生にとって、とてつもなく大きなアドバンテージです。

3. 英語力の活用

短答試験には少ないですが、実務や条約の理解において、英語論文を読み書きしている受験者のスキルは、条文(特にパリ条約やPCTなどの国際条約)の理解を早めます。


⚠️ 年齢による注意点(戦略)

あえてネガティブな側面もお伝えします。

  • 老眼対策: 短答試験は3.5時間×2コマで、細かい文字のマークシートを塗り続けます。身体的な目の疲れ対策(眼鏡の調整など)が必須です。
  • 素直さ: ベテラン研究者や管理職の方にありがちなのが、「自分の解釈」にこだわってしまい、素直に「試験的な正解」を受け入れられないことです。試験勉強においては、一度プライドを捨てて「予備校の型」にはまる柔軟性が必要です。

結論

「遅すぎる」ことは全くありません。むしろ、ライフサイエンスの専門知識 × 研究関連の実務経験といったバックグラウンドに「弁理士資格」が加われば、定年後も大学の知財部やTLO(技術移転機関)、あるいは顧問として、引く手あまたの人材になれます。基礎体力(脳の体力)が違う人の場合、合格率の数字(%)は気にする必要はありません。

 

参考

  1. 【起業事例】健康なうちは仕事を続けたい。50歳で起業を志し定年後に弁理士として開業。インタビュー2018/9/7 https://pro50plus.mbp-japan.com/interview/okumura-kazumasa/
  2. 特集《知財で活躍する女性》 決断のとき パテント 2015;Vol. 68 No. 8  https://www.jpaa.or.jp/old/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201508/jpaapatent201508_037-042.pdf

特許の審査では入手困難な文献であっても「既知」とみなされるの?

未知のものが自然の懐に横たわっているか、あるいは誰も読まない価値のない写本のページの中に埋もれているかは、実際には何の違いもありません。なぜなら、科学の血流に入り込んでおらず、その中で種のように循環していないアイデアは、私たちにとっては実際上、存在しないのと同然だからです。https://elicit.com/blog/literature-based-discovery

疑問:特許の要件として、例えば、異国で書籍として出版されたけどすぐに絶版になって、誰も入手できないような場合、それでもそれは既知とみなされる?あとから掘り起こされたときに。

Gemini 2.5 Pro:

ご質問のケースは、特許法上の**「公知」(Known)または「先行技術」(Prior Art)**の判断において非常に重要なポイントになります。

結論から言うと、一般的に、異国で書籍として出版された場合、すぐに絶版になり誰も入手できなくなったとしても、それが「公然と知られた」または「刊行物に記載された」という要件を満たしていれば、原則として既知(先行技術)とみなされます。


💡 特許の「既知」性の判断基準

特許の要件である**新規性(Novelty)**を判断する際、その発明が出願日より前に「既知」であったかどうかが問われます。既知とされるための主な基準は以下の通りです。

1. 刊行物への記載(Printed Publication)

  • 要件の核心: 書籍や雑誌、公開された特許公報などに記載され、公衆が入手可能な状態に置かれたという事実が重要です。
  • 絶版の影響: 絶版になり誰も入手できなくなったとしても、一度でも公衆に配布・閲覧可能となった時点で、その書籍に記載された内容は「刊行物に記載された発明」となります。
    • 後の入手困難性は、過去に公開された事実を打ち消しません。図書館などに一冊でも収蔵され、閲覧可能だった履歴があれば、先行技術としての地位を失いません。
  • 「異国」の影響: どこの国で出版されたかは関係ありません。世界中のあらゆる刊行物が先行技術となり得ます(世界新規性の原則)。

2. 公然知られた発明(Publicly Known)

  • 要件の核心: 不特定多数の人がその内容を知り得る状況にあったことです。
  • 書籍として出版・販売された場合、それは不特定多数への提供にあたるため、この要件も満たし得ます。

📚 あとから「掘り起こされた」場合

時間が経ってからその絶版本が発見・提出されたとしても、特許審査においては、その書籍が出願日よりも前に発行・公開されていたことを証明できれば、そこに記載された内容は先行技術として扱われます。

したがって、「すぐに絶版になり誰も入手できない」という状況は、特許の新規性判断においては、その書籍が一度公開されたという事実を覆す理由にはなりません

この原則は、特許制度が発明の重複を避け、知識の開示を促すという目的から導かれています。どこかに一度でも開示された知識は、その後に忘れ去られたとしても、新しい特許を与える対象とはしない、という考え方です。

 

質問:それが自費出版だった場合は?10冊しか出版されていなかったら?

Gemini 2.5 Pro:

特許の新規性判断において、それが自費出版であったり、**出版部数が極端に少なかったり(例:10冊)**しても、原則として「既知」(先行技術)とみなされる可能性が高いです。


📚 自費出版・少部数の場合の判断

特許法が「刊行物に記載された発明」を先行技術と見なす際に重要となるのは、その情報が公衆に対して利用可能になったかどうかという事実です。

1. 公開性(Availability to the Public)が鍵

  • 出版の主体は問わない: 自費出版(私的な出版)か、商業出版か、あるいは研究機関のレポートかといった出版の主体や形態は重要ではありません。重要なのは、不特定多数の人がその情報にアクセスできる状況に置かれたかどうかです。
  • 部数は関係ない: たとえ10冊しか発行されなかったとしても、その10冊が図書館、大学、書店など、不特定多数の人が自由に閲覧・入手できる場所に置かれ、実際にその機会が与えられていたのであれば、それは「刊行物」として扱われます。
    • 例えば、10冊が国立図書館や主要な大学図書館に寄贈され、カタログに登録されて誰でも閲覧可能になっていた場合、それは「公開された」と判断されます。

2. 「秘密性」が保たれていたかどうかの確認

もし、その10冊が秘密保持契約のもと、特定の関係者(例:協力企業の役員のみ)に機密情報として配布されていたに過ぎない場合は、公にされたとは見なされず、先行技術にならない可能性があります。

しかし、自費出版で**「販売」された、または「寄贈」**という形で一般に提供されたのであれば、秘密性は失われ、「公然と知られた」情報として扱われます。


📌 まとめ

要件 判断のポイント 先行技術となる可能性
自費出版 出版の主体は関係ない。 高い
10冊 部数は関係ない。 高い
決定的な要素 不特定多数の人が閲覧・入手できる状態に置かれたかどうか。 公開されていればYes

したがって、その10冊の自費出版の書籍が、一度でも一般の流通や図書館の棚に置かれていたという事実が証明できれば、それは「先行技術」として特許の新規性を否定する根拠になり得ます。

 

質問:刊行されたという記録は必要ってことね。別にその10冊しか現存しない1冊を特許審査官が読むわけじゃないよね。

Gemini 2.5 Pro:その通りです。非常に正確な理解です。

特許審査において重要なのは、「刊行されたという記録(証拠)」であり、現存する書籍そのものを審査官が読む必要はありません


💡 審査における「証拠」の役割

特許審査官が必要とするのは、以下の事実を証明する証拠です。

1. 刊行物の存在と公開日

その書籍が「いつ(公開日)」「どこで(発行場所)」「どのように(一般にアクセス可能であったか)」公開されたかを証明する記録が必要です。

  • 具体的な証拠の例:
    • 国立図書館や大学図書館などの目録(カタログ)の記録
    • 書籍の奥付(発行日、著者名、発行者名が記載されたページ)の画像またはコピー。
    • 当時の販売記録新聞広告

2. 内容の立証

その書籍に、出願された発明と同じ内容が具体的に記載されていることを示す必要があります。

  • 審査官は、現存する1冊(またはそのコピー)に目を通し、その記載内容と特許請求の範囲を比較します。
  • たとえ10冊しか存在しなくても、その1冊のコピーやデジタル画像が証拠として提出され、それが出願日より前に刊行されたと証明されれば、新規性否定の根拠となります。

結論

特許審査で先行技術として認められるための要件は、

  1. 公衆がアクセス可能な状態に置かれたという「記録(証拠)」があること(公開性の立証)。
  2. その刊行物に、発明と同じ技術的内容が「記載されていること」(内容の立証)。

現存部数が少ないことは、先行技術としての効力を失わせる理由にはなりません。重要なのは、「一度、公の知識となり得る状態にあった」という事実です。