臨床研究を始めるためのわかりやすい教科書8冊を紹介

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臨床医が臨床研究を始めるときに知っておくべきことがいくつかあります。まずに日常の臨床における疑問をどうやってリサーチ・クエスチョンに定式化するか。研究のデザインをどうするか。介入研究と観察研究とに大きく分けられます。観察研究は、前向き研究(前向きコホート研究)か、後ろ向き研究か、横断研究か。後ろ向き研究は、症例・対照研究や後ろ向きコホート研究があります。研究デザインが決まったら、知っているべき法律というものがあります。研究は法律や規程を遵守して行わなければなりません。臨床研究は、大学の倫理委員会の承認を得る必要があります。

 

役立つわかりやすい教科書をいくつか紹介します。

臨床研究の道標

福原俊一『臨床研究の道標 第2版 上巻・下巻』健康医療評価研究機構 2017年

臨床医が臨床医のために書いた臨床研究指南書を何冊も読んでみましたが、それぞれに特徴がありどれを勧めたらいいか迷います。そんな中にあって、あえて一冊だけ勧めるならこの臨床研究の道標(実際には上下巻に分かれているので2冊になりますが)になります。なぜかというと、一番網羅的に描かれていると感じるから。落とし穴になりそうなことや、疑問を持たれそうなことがしっかり先回りして説明されています。ただし他の本と異なり、臨床研究の道標は、研究のデザインに特化しています。つまり実際に実験・研究で手を動かし始める直前までに特化した本です。実際のデータ収集や実際にデータを手元においての統計学的な解析、論文執筆、文献検索の方法といったことは対象としておらず、類書に譲るスタンスです。本の帯には「研究デザインのナビゲーションブック」と銘打たれていますが、まさにその通りの本です。この本に導かれて、自分の研究テーマ、クリニカルクエスチョンに関して、研究構想を具体化して研究計画に構成していくことができると思います。よくぞここまで臨床研究のノウハウをまとめあげたものだと感心、感動しました。先輩研究医がうぶな後輩医師のために勢いで書いた本というノリでは決してないのですが、それでいて、指導医から今度論文でも?とけしかけられてオロオロとまどう研究医のタマゴとメンターとを登場させて、砕けた会話を各章に入れて、リラックスしたムードで本を読み進むことができるようになっているのが一興です。

自分が買ったのは第2刷(2019年)で、第1刷(2017年)にあったミスプリは修正されていました。買うなら新しい印刷のものを買ったほうが良いです。

  1. 第1刷のための正誤表:https://www.i-hope.jp/activities/publication/pdf/michishirube_vol.2_seigohyou_ver.1.pdf
  2. 臨床研究者養成コース(Master program for Clinical Research: MCR)(京都大学):医学研究科社会健康医学系専攻(School of Public Health: SPH)の特別コースで、臨床医を対象とした1年制。(開設以来MCRプログラムを牽引されてきた福原俊一教授のご退任を受けまして、 2020年度から、ディレクターを引き継いでおります。プログラムディレクター薬剤疫学分野 教授 川上 浩司)
  3. 臨床研究デザイン塾(健康医療評価研究機構)今後の予定

臨床研究と論文作成のコツ

臨床研究と論文作成のコツ 読む・研究する・書く 松原茂樹 (著, 編集), 大口昭英 (著), 名郷直樹 (著), 山田 浩 (著) 2011年7月7日 東京医学社

論文の読み方、臨床研究のやり方、臨床研究英語論文の書き方の3つを一冊にまとめた実践的な教科書。サンプルサイズの計算の実例も示すなど、本当に実際的な本です。2011年の発行なので、他の類書に比べるとやや古いですが、どうしてどうして、かなり濃密な内容。研究テーマの設定から論文の読み方、研究の進め方、統計処理の方法、論文の書き方、論文受理までの長い研究の道のりの勘所を教えてくれます。

 

研究デザインと統計解析

査読者が教える 医学論文のための研究デザインと統計解析 森本 剛 著 中山書店 2017年3月21日

クリニカルクエスチョンを抱くところから、論文出版に至るまでの道案内をしてくれる、かなり実際的な教科書。どの本が一番というのが難しいくらい、良書がいくつも出ているわけですが、その中でもこの本は研究の過程全般に関して網羅的で、メリハリの効いたアドバイスが随所にあり、自分はかなり気に入りました。ただし上に紹介した類書はまた違った切り口、スタイルなので甲乙つけがたいです。自分が気に入った一冊を何度も繰り返し読みながら臨床研究を実践してみるのがいいと思います。著者が疫学、医療統計の専門家なので、臨床研究の実際だけでなく、統計に関する詳しいノウハウが得られるところが大きなメリット。

 

臨床研究 最短攻略50の鉄則

できる!臨床研究 最短攻略50の鉄則 この一冊があれば今日から臨床研究を始められる 康永秀生 著 2017年9月28日 金原出版 実際的な話題が解説されており、やる気を起こしてくれる熱い本だと思います。こちらも疫学、医療統計の専門家による本。森本 剛 著『査読者が教える 医学論文のための研究デザインと統計解析』と甲乙つけがたく、結局自分は両方買って読んでいます。

 

臨床研究アウトプット術

臨床研究アウトプット術 中外医学社2020年2月25日

各章が老年医学、緩和ケア、リハビリ、内科、外科、などいろいろな領域の医師によって書かれているので、自分の専門における臨床研究の具体例が分かって良いと思います。

 

臨床研究論文の読み方

ゼロからはじめる 臨床研究論文の読み方 研究デザインと医学統計の必須ポイントがよく分かる 東京図書 2020年2月25日

最初に脚気がいかに日本で問題だったか、疫学的なアプローチをとった日本海軍とそうしなかった日本陸軍とで明暗が分かれたことなど、非常に興味深い事例を題材として、研究の真髄が説明されており、ここを読むだけでも臨床研究に対するモチベーションが上がります。

臨床研究最速最短

原 正彦『臨床研究立ち上げから英語論文発表まで最速最短で行うための極意 (すべての臨床医に捧ぐ超現場重視型の臨床研究指南書) 』 2017/12/4

臨床研究において先を行く先輩による、熱血指導!といった感じの本です。まずはハートに火をつけるところからやってくれる貴重な本。続編みたいな形で、『実践対談編 臨床研究立ち上げから英語論文発表まで最速最短で行うための極意 (すべての臨床医そして指導医にも捧ぐ超現場型の臨床研究体験書) 単』2018/4/18 もあります。

 

臨床研究いろはにほ

全体像がひと晩で臨床研究いろはにほ もう2歩踏み込む ライフサイエンス出版 2015年4月27日

112ページなので頑張ればひと晩で読めるかもしれません。しかし内容のバランスもよく、説明文がわかりやすく、初心者に寄り添う口調で説明されているので、初めての人にとってはとても親切な本だと思います。

 

その他の類書

以下、まだ読んでいないけれども気になる本を自分のメモのために挙げておきます。

  1. 臨床研究マスターブック 2008/4/1 福井 次矢

 

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