室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)とは

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左室駆出率の保たれた心不全(Heart failure with preserved ejection fraction; HFpEF)という言葉をしばしば目にするのですが、それが何なのかは文字通りとしても、なぜそれが大事なのか、なぜみなそれに興味を持っているのかが今一つピンと来ていませんでした。

心臓には、血液を循環させるための二つの機能があります。全身へ血液を送り出すための「収縮機能」と、全身から戻ってきた血液を取り込むための「拡張機能」です。以前は、左心室の収縮力が低下し(左室駆出率が50%未満)、左心室が拡大した「収縮機能不全」が心不全の主な原因と考えられていました。しかし、最近の研究から、高齢者の心不全の半数は、収縮力が保たれているにもかかわらず、左心室が硬くて広がりにくいために、心不全症状を呈する「拡張機能不全」というタイプの心不全であることが分かってきました。… 拡張能を正確に評価することが難しいため、「収縮機能が保たれた心不全」(heart failure with preserved ejection function: HFpEF)と呼ばれています。(高齢者の心不全 日本心臓財団

拡張不全と言えばよいのですが,日常診療では拡張機能を正確に評価することは,必ずしも簡単ではありません.そのため,便宜上このような病態を「収縮機能の保たれた心不全」“Heart Failure with Pre-served Ejection Fraction”,略名 “HFpEF”と呼んでいます.

なるほど、「左室駆出率の保たれた」の言わんとするところは、収縮とは逆の機能すなわち拡張が出来ない、つまり、血液を取り込むほうがうまくいかないということだったんですね。(左室駆出率の保持された心不全の病態 吉川 勉(榊原記念病院) 心臓財団虚血性心疾患セミナー(2015年9月29日放送分))

 

“If an old man’s heart relaxes slowly, his capacity for physical exertion is thus limited, even though the systolic contractions were still like those of youth.”(老人の心臓がゆっくりと拡張するなら,たとえ収縮能が若い人と同じであっても運動能力は制限されるであろう.)1923 年の Physiological Review に載っている Henderson の言葉である.90 年以上前に高齢化社会における拡張不全の出現を予言していたのである.(拡張不全とはどのような心不全のことをいうのでしょうか? 拡張不全の疫学

 

参考

  1. 駆出率(EF)の保たれた心不全(総説) NEJM, Nov.10,2016 西伊豆早朝カンファランスH28.12西伊豆健育会病院仲田和正
  2. 心不全の種類
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