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乳幼児と小児と成人の皮膚の違い

シャンプーには、乳幼児用、小児用、大人用といった違いがありますが、一体何が違うのでしょうか?

 

皮膚の発達というのは生まれた直後から成人と同様というわけにはいかなくて、乳幼児の皮膚は大人程丈夫ではないそうです。そのため、ちょっとした刺激に対しても炎症を起こしてしまったりするので、大人用の洗浄力が強いシャンプーは向いていないそう。

 

一般に表皮,真皮ともに,成人より小児,さらに乳幼児の方が薄い3 ).例えば,上腹部の表皮の厚さは,早産児30μm前後,満期産児40μm前後,成人50μm前後8・9 )と報告されている.新生児皮膚の解剖・生理学的特徴 中田節子, 馬場 淳 信州大学 赤ちゃんを守る医療者の専門誌 with NEO(旧:ネオネイタルケア))

… 急激に皮脂量が減ってきて,生涯で最も皮脂分泌の少ない,したがって乾燥しやすい乳幼児期に突入します( 図 1 1))。また,この時期は皮脂だけでなく角質細胞の天然保湿因子であるアミノ酸( 図 2 1))や角質層細胞間物質であるセラミドなども少ない状態であり,水分の保持量が少なく( 図 3 1)),十分な保湿機能やバリア機能を発揮することができなくなります。 また,構造的にも子どもの皮膚は表皮の厚みが薄めで,部位によっては成人の 1/2 ~ 1/3 の薄さしかなく,その点からも機械的刺激に弱く,バリア機能が未熟といえます。(乳幼児の保湿 特 集 /丈夫な皮膚をつくる / 正しい保湿剤の使い方 馬場直子 地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 皮膚科 部長 / 横浜市立大学 皮膚科 臨床教授)

 

子供用シャンプーは、成人用よりもずっと肌に優しい成分になっていて、かといって赤ちゃん用シャンプーよりも洗浄力があるというバランスのもとに作られているようです。子供は元気に活動するので、髪の汚れ方も赤ちゃんのときより大きくて、それに対応できる洗浄力のシャンプーが必要ということのようです。

皮膚の構造に照らしていえば(参考:ルレシャンの商品サイト)、こどもの肌は大人に比べて角層(角質層、角質細胞層)が薄いのだそう。角層は皮膚の一番表面に位置しており、外界と体の境目にあって体内の水分が外に逃げるのを防ぐバリア(角層バリア)の役割があります。つまり、肌の保湿に重要な層なので、この層がまだ薄い時期は保湿成分を含むシャンプーが望ましいということ。また、子供の皮膚のもう一つの大きな特徴は、皮膚に脂分を供給する役割をもっている「皮脂腺」が成人のように発達しておらず、洗浄力が強い成人用シャンプーだと皮膚表面の脂質(皮脂膜)をとりすぎて、肌が乾燥してしまいます。

 

参考

  1. 角層 (コトバンク)皮膚の最外層に位置し、表皮角化細胞角化した扁平な角層細胞が重なった層。細胞と細胞との間は角層細胞間脂質で満たされている。
  2. 細胞間脂質(花王)角層をレンガ塀に例えるならば、角層細胞はレンガに、細胞間脂質はレンガ同士の間を埋めるセメントに例えることができます。
  3. 角化細胞(コトバンク)皮の細胞.表皮最下層の基底層(基底細胞)で分裂して順次皮膚表面へと移行し,最後はとなる過程をとるケラチン生成細胞.
  4. 角化(ドクターズオーガニック)表皮の角化細胞(ケラチノサイト)が、角質細胞へ至るまでの過程を総称して角化と呼びます。
  5. 角質(ウィキペディア)ケラチンの別称
  6. 角質化(コトバンク)脊椎動物の表皮の細胞にケラチンが沈着して硬くなること。角化。
  7. 表皮角化細胞タカラ基底層でつくられ、上層へと移動する。この移動の間に徐々に分化し、無核、扁平で高度に角化した扁平上皮細胞を形成している角質層に到達するまでに形態が変化する。この層は、感染性病原体の体内への侵入や水分の損失を最小限にするための効果的なバリアを形成する。角化細胞は様々なサイトカイン、増殖因子、インターロイキンや補体因子も産生する。したがって、角化細胞は創傷治癒や炎症、免疫応答に重要である。 (正常ヒト表皮角化細胞;Normal Human Epidermal Keratinocytes;NHEK)
  8. HaCaT 細胞(コスモバイオ)成人男性皮膚から樹立された不死化角化細胞(ケラチノサイト)株です。
  9. あたらしい皮膚科学 角化(PDF)
  10. ヒト表皮角化細胞の増殖と分化-特に液性因子の役割について(PDF) 小林敬三, 星 宏良 (株)バイオ科学研究所 組織培養研究〕第7巻 第2号1989年
  11. 美しい皮膚表層の高分子 角化の仕組み(PDF) 北島康雄 岐阜大学医学部皮膚科学教室
  12. ケラチンタンパク質の生化学 -構造、機能、そして遺伝子までー (PDF) 片方陽太郎 蛋白質核酸酵素38(16)1993年
  13. 表皮細胞の角化におけるロリクリン 香川大学医学部皮膚科 米田 耕造 辺縁帯は表皮細胞の角化に際して角層細胞膜の裏打ち構造物として形成される。ロリクリンは辺縁帯の主成分であり、ヒトロリクリンは 315 個のアミノ酸より構成される。その分子量は約 26kDa であり、遺伝子はヒト染色体 1q21 上に存在する。近年ロリクリン遺伝子変異による遺伝病も見つかってきた。この疾病群ではロリクリン遺伝子に 1 塩基の挿入変異が生じるため遺伝子の読み枠がずれ、ロリクリンのカルボキシル末端がアルギニンに富む特殊なアミノ酸配列に変化する。このようなロリクリンの特殊な変異による角化異常症は、現在ではロリクリン角皮症と総称されている。

臨床試験のデザインと倫理の問題

ランダム化試験試験が最も厳密に対照との比較を可能とするということが臨床研究の教科書に説明されていますが、それを読んで、非常に有望な新薬が現れたときに誰も対照群に割り当てられたくはないだろうになぜそんなことができるのだろうと不思議に思っていました。

当然といえば当然なのですが、その点が非常に大きな倫理的な問題として浮かび上がった事例が過去にあったんですね。PLX4032というロシュが開発した薬で、メラノーマの中でもBRAF遺伝子に変異がある患者さんを対象とした臨床試験でした。Dr. Paul Chapman医師がリーダーとして行った臨床試験です。この臨床試験に参加したいとこ同士の二人、Thomas McLaughlinさんは新薬に割り付けられ、もう一人のいとこのBrandon Ryanさんは対照群に割り付けられました。その結果、メラノーマの程度ではより悪かったマクローリンさんが助かり、マクローリンさんよりも進行度合いが遅かったライアンさんが無くなるという結末を迎えてしまったものです。二人を治療したDr. Bartosz Chmielowski医師は、非常に辛い立場に立たされましたがこの臨床試験のプロトコルに従いました。

京都大学大学院医学研究科 聴講コース 臨床研究者のための生物統計学「統計家の行動基準 この臨床試験できますか?」

  1. New Drugs Stir Debate on Rules of Clinical Trials The New York Times By Amy Harmon Sept. 18, 2010