投稿者「PhD」のアーカイブ

ニューロモジュレーション、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)などについて

ニューロモジュレーションとは

  • 電気・磁気刺激や薬剤を用いて神経活動を改善させる治療法
  • 反復経頭蓋磁気刺激療法(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)
  • ディープ経頭蓋磁気刺激療法(deep TMS)(H-coilを用いる)
  • 磁気けいれん療法(magnetic seizure therapy:MST)
  1. 治療抵抗性うつ病に対するニューロモデュレーションの可能性 野田 賀大 慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室精神病態生理学研究室  特集 定型的な薬物療法に行き詰まったときの新たな治療戦略―難治性精神症状への挑戦― 精神神経学雑誌 122: 456-462, 2020

rTMS療法とは

脳の背外側前頭前野(記憶、認知、意欲、判断などに関連する部分)を磁気によって刺激する治療法。日本では2019年に、治療抵抗性うつ病に対する治療法として薬事承認。双極性障害など他の精神疾患に対する有効性および安全性の検討もなされている。

  1. rTMS療法で禁煙継続率高まる 2021年10月19日 17:38 MedicalTribune

 

虫垂と盲腸と虫垂炎と虫垂炎の治療方法について

「虫垂炎の抗菌薬による保存治療は約9割で2日以内に初期改善見られるが、約3割で手術に至る。糞石がある場合は8割初期改善するが、4割は手術に至る。ただし回腸・盲腸切除まで至ることはまれ。」(NEJMに学ぶ急性単純性虫垂炎の治療 西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正 2021年10月19日 18:14 MedicalTribune)という文を読んで、「盲腸?盲腸って、場所のことだっけ?」と思いました。虫垂と虫垂炎と盲腸がごっちゃになっていたので整理しておきます。

小腸から大腸につながる部分に、行き止まりの部分があってそこが「盲腸」。盲腸の先にさらに小さな袋小路みたいになっている部分があってそこが「虫垂」。虫垂が炎症を起こした状態が虫垂炎だが、虫垂炎は俗に盲腸とも呼ばれる。だから、「盲腸になった。」という言い方をよく耳にするわけです。医学教育を受けたことが無い人間としては、本当にややこしい話。

  1. 盲腸炎って何? 大阪市立十三市民病院 虫垂炎とは、何らかの原因で虫垂に炎症が起こる病態を指し、一般的には「もうちょう」として知られています。‥実は「もうちょう」とは病気の名前ではなく、虫垂の根元にある大腸の一部分をさす言葉なんです。

切るべきか切らざるべきか

”もうちょう”になったら、もうちょう(実際には虫垂)を切るのが治療だと大昔には思っていました。ところが、今ではそうでもないようです。薬で治療するという選択肢があるからです。

  • 虫垂を切らずに薬で治療した場合、10~35%くらいの人で再発
  • 虫垂を切ると、その後3年半の間、大腸がんのリスクが2.1倍に
  1. 突然の激痛!盲腸(虫垂炎)の新事実 2017年3月8日(水)午後7時30分 NHKガッテン!GATTEN
  2. Association between Appendectomy and Subsequent Colorectal Cancer Development:An Asian Population Study Shih-Chi Wu et al. PLoS One. 2015 Feb 24;10(2)

杉本彩さんは、仕事先で突然もうちょうになったときに、切らない(手術しないで薬で治す)という選択をしたそうです。

病院での検査結果は、急性虫垂炎。緊急オペが必要と大阪で診断されました。けれど、なんとか東京に帰りたい旨を伝え、二度の抗生剤投与のあと、翌日東京に戻りその足で東京の病院に行き、再検査を受け入院ということになってしまいました。‥ オペは、今回私の希望通り回避できたものの、一週間くらいの抗生剤の投与と絶食が必要ということで、ただいま点滴に繋がれた不自由と、絶食の空腹に耐えている最中です。(昨日より入院しました 2011-12-19 12:02:31 杉本彩のブログ)

虫垂炎の治療方針に関する最近の論文

  1. Treatment of Acute Uncomplicated Appendicitis. David A. Talan, M.D., and Salomone Di Saverio, M.D., Ph.D. September 16, 2021 N Engl J Med 2021; 385:1116-1123 DOI: 10.1056/NEJMcp2107675
  2. 上の論文の解説記事:NEJMに学ぶ急性単純性虫垂炎の治療 西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正 2021年10月19日 18:14 MedicalTribune

急性虫垂炎(いわゆる、”盲腸”)の症状

典型的には、みぞおちから始まった腹痛が次第に右下腹部に移動するとされています。食欲不振や、時に嘔気・嘔吐を伴うことがあり、発熱を伴うことも多いとされます。なお、炎症が進んで虫垂に穴があくと、痛みが下腹部全体に広がることもあります。(急性腹症1 急性虫垂炎 2018年3月27日 カテゴリー: 医療コラム(堀部大輔医師) ラッフルズジャパニーズクリニック)

脳波の読み方に関する教科書

脳波の読み方

臨床脳波を基礎から学ぶ人のために

モノグラフ 臨床脳波を基礎から学ぶ人のために / 日本臨床神経生理学会編. — 第2版. — 診断と治療社, 2019

脳波判読step by step

入門編 脳波判読step by step / 大熊輝雄, 松岡洋夫, 上埜高志著 ; 入門編, 症例編. — 第4版. — 医学書院, 2006

よくわかる脳波判読

よくわかる脳波判読 / 音成龍司, 辻貞俊著. — 第3版. — 金原出版, 2014

問題形式になっていて、脳波の判読を独学しやすい。全79問。大判で脳波のチャートも大きくて見やすい。初版が1997年で、第2版が2008年、第3版が2014年の刊行なので、いかにロングセラーかがわかる。お勧め度★★★★★

デジタル臨床脳波学

デジタル臨床脳波学 / 末永和榮, 松浦雅人著. — 医歯薬出版, 2011

デジタル脳波判読術

脳波の行間を読む デジタル脳波判読術 / 飛松省三, 重藤寛史著. — 南山堂, 2019

誘発電位ナビ

ここに気をつける! 誘発電位ナビ : はじめの一歩から臨床と研究のヒントまで / 飛松省三著. — 南山堂, 2017

哺乳類が腸で空気呼吸?腸呼吸が治療に使えるか

「腸呼吸」なる言葉を初めて聞いたのですが、ドジョウでは有名なことのようです。

ドジョウの腸呼吸

ドジョウがときどき水表面に浮かび出て水面上の空気をのみこみ,肛門より気泡を放出する特殊な習性をもっていることは,古くから知られている。のみこんだ空気が腸管を通って肛門より排出されることは末広1)により証明され,腸管表面の粘膜に毛細血管が密に分布すること2),排出されるガスを分析した結果,酸素が減少し炭酸ガスが増加していることなどが報告されている。(ドジョウの腸呼吸について 水産増殖 15(3) 1967 THE AQUICULTURE)

ドジョウの腸呼吸について 水産増殖 15(3) 1967 THE AQUICULTURE

ドジョウがぐるぐる廻りながら時々水面にやってきては空気を飲み込み、お尻からあぶくを出しながら水底に戻っていく光景を興味深く思ったものです。‥ 空気呼吸をする魚は他にもいますが、そのやり方はいろいろです。ドジョウの場合、その名も腸呼吸といい、口から飲み込んだ空気を腸管内に密に分布する毛細血管でガス交換を行います。腸が肺の役割をしているわけです。ドジョウは魚ですので、当然、鰓呼吸もしていますが、水が乏しくなったときや、水中の酸素が少なくなったときに、腸呼吸によって補っているのです。(第20回「ドジョウ」 さかな博士)

腸呼吸する種

Breaking wind to survive: fishes that breathe air with their gut. J. A. Nelson 2014 The Fisheries Society of the British Isles When gut segments evolve into an air-breathing organ (ABO), there is generally a specialized region for exchange of gases where the gut wall has diminished, vascularization has increased, capillaries have penetrated into the luminal epithelium and surfactant is produced. This specialized region is generally separated from digestive portions of the gut by sphincters.

哺乳類で腸呼吸?

研究グループはマウスブタ直腸酸素ガス多量の酸素が溶け込んだ液体を入れる方法を試した。その結果、何もしなければ5分程度で死んでしまう低酸素の環境でマウスの直腸に酸素ガスを入れた場合、生存時間が2倍程度に延びた。腸の粘膜をはがした状態にすると1時間以上生存し、呼吸不全の状態は改善された。血中の酸素量も大幅に増加した。酸素が溶け込んだ液体を入れた場合も呼吸不全が改善。ブタでも同様の効果が確認された。(朝日新聞 尻から酸素、腸呼吸で呼吸不全を改善 コロナ治療に期待 2021年5月15日 0時00分 )

 

ドジョウなどの水棲生物の一部は、泥池における低酸素環境を生き抜くために、副呼吸機構として、肛門側近傍の腸を活用して酸素換気を行う「腸呼吸」を有している。最近、研究代表者らは、この腸呼吸システムを活用することで、マウスブタなどの哺乳類において、致死的な低酸素条件下でも生存可能である、という驚くべき知見を得た。本研究では、「進化的に廃絶した機能と考えられてきた腸呼吸が、なぜ哺乳類でも機能するのか?」という問いに迫る。本研究を通じて、腸呼吸の生物学的理解を深めるとともに、肺移植に代替する治療法確立に貢献する革新的な技術の創出につなげる。(武部 貴則 基盤研究(A)  東京医科歯科大学 2021-04-05 – 2025-03-31 KAKEN

  1. Clinical and Translational Resource and Technology Insights Mammalian enteral ventilation ameliorates respiratory failure. Med Volume 2, Issue 6, 11 June 2021, Pages 773-783.e5
  2. 腸呼吸の応用により、呼吸不全の治療に成功 -腸換気技術を用いた新たな呼吸管理法の開発へ光-  2021年05月19日 京都大学プレスリリース https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2021-05/210515-date-5b169b4c37f36459545f90ab144cbc60.pdf

ノーベル賞を受賞した田中耕一氏は、2003年に島津製作所質量分析研究所を訪れた当時の皇太子殿下ご夫妻に対して、「血液一滴で数百の病気の早期診断を可能にする」と語ったのだそうです(MedicalTribune 「血液一滴から」の約束は果たされたか 2021年10月18日)。病気を早い時期に見つけて早くから治療を開始することが大事ですが、そのためには検査を受ける人があまり負担を感じないような簡便な診断スクリーニング方法が望まれます。田中耕一氏の言葉にあった血液だけでなく、「鼻腔・咽頭拭い液」、呼気、唾液、尿、糞便などに、病気の「証拠」となる「マーカー」が見つけられないかという研究が盛んです。とくに侵襲性がなく、心理的な負担も少ない方法として唾液、呼気が注目されます。

呼気に排出される微量の物質を病気になったときのバイオマーカーとして用いて、診断に役立てようという研究があるそうです。KAKENデータべ―スで「呼気 マーカー」で検索すると8件の研究課題が見つかりました。

  1. 前立腺癌バイオマーカーとしての呼気中アルデヒド類の有用性の検討 2021-04-01 – 2024-03-31 若手研究 小区分90130:医用システム関連 佐々木 陽典 東邦大学, 医学部, 助教 (80744151) 研究開始時の概要:呼気中には癌細胞が抗腫瘍免疫による活性ラジカルを介した攻撃を受けた際に生成されるアルデヒド類が排泄されることが報告されており、癌のバイオマーカーとして精力的な研究が行われているが、前立腺癌のバイオマーカーとなりうるアルデヒド類の同定には至っていない。本研究は、この現状を踏まえてアルデヒドと特異的に反応する性質をもつO-(2,3,4,5,6-Pentafluorobenzyl) hydroxylamine (PFBHA)を用いたPFBHAサンプラー捕集・溶媒抽出-ガスクロマトグラフィー/質量分析法を用いて、前立腺癌のバイオマーカーとなりうる呼気中のアルデヒド類の同定を目指すものである。 研究概要: 研究成果の概要: 研究実績の概要:
  2. 呼気癌マーカー複数同時検出のための酵素電気化学センサアレイの開発 2020-04-24 – 2022-03-31 特別研究員奨励費 小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連 研究開始時の概要:近年、予防医学という観点から呼気中に含まれる病気に関連したバイオマーカーを非侵襲に検出し、病気の初期段階を手軽に診断可能な医療用デバイスが注目されている。診断に使用するセンサーには選択性・感度が求められるが、従来の無機半導体ガスセンサーでは選択性・感度が不十分であった。本研究では、選択性の高い酵素と高感度測定可能な電位差測定を組み合わせたセンサー・システムを構築し、センサー表面を気相中の呼気癌マーカーを取り込むハイドロゲルで被覆することで、呼気癌マーカー検出を試みる。また、酵素の組み合わせを変えて様々な癌マーカーに対応したセンサーをアレイ化することで、1次スクリーニングデバイス開発を目指す。 研究概要: 研究成果の概要: 研究実績の概要:
  3. 呼気癌診断を実現する嗅覚センサシグナルの「マーカー特徴量」の網羅的探索と最適化 2018-04-01 – 2021-03-31 基盤研究(A) 中区分90:人間医工学およびその関連分野 吉川 元起 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (70401172) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要: 研究実績の概要:1000種類以上の多成分混合ガスである呼気は、疾患によって数十種類のガス濃度比が微妙に変化すると考えられており、疾患の状態を反映する「マーカー分子」の特定が難しい。またそれらのピンポイント測定だけでは情報不足となる可能性が報告されている。
    そこで本研究では、呼気全体を多種類のセンサ素子でパターン化する嗅覚センサを用いて、疾患に起因する複雑なガス濃度比の変化全体を捉え、この嗅覚センサシグナルのうち、がん関連の医療メタデータと明確な相関を示す特徴を「マーカー特徴量」と定義し、その網羅的な探索を行う。本研究では、小型嗅覚センサ素子として高い感度や多様性を有する「MSS」を利用する。このMSSに関しては、産学官連携によって、嗅覚センサに必要となるハードウェア/ソフトウェア両面の包括的な技術体系を構築しており、これらと密に連携することにより、嗅覚センサの呼気診断への適用可能性を最大限追求する。
    2018年度は、可能な限り効率よく信頼性の高いデータを収集するために、呼気の採取から測定までの一連のプロトコルの確立を進めた。具体的には、温度や湿度の揺らぎやサンプルの経時変化など、センサシグナルの信頼性や再現性の低下の原因となる不確定な要素の徹底的な排除を行った。その結果、センサシグナルに影響を与えている要因が明らかになり、その影響の少ないサンプルを用いた解析では良好な結果が得られることも明らかになってきた。
  4. 呼気ガスバイオマーカーの周術期管理における有用性の検討 2012-04-01 – 2014-03-31 挑戦的萌芽研究 松永 明 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70284883) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究は、周術期の患者管理に有用な呼気ガス中の揮発性有機化合物(volatile Organic Compounds: VOCs)を特定し、そのガスセンサを開発することである。ガスクロマトグラフィーを用いて侵襲度の高い手術における呼気ガス中VOCsの変動を測定したが、有用なマーカーを特定できなかった。
    VOCs測定のためのガスセンサは、水蒸気の影響や触媒活性の低下などがその測定精度に影響を与えることが分かった。 研究成果の概要: 研究実績の概要:
  5. 喫煙者の呼気中ガス成分と酸化ストレスマーカー及び吸煙行動の因果関係の解明 2010 – 2012 若手研究(B) 稲葉 洋平 国立保健医療科学院, 生活環境研究部, 主任研究官 (80446583) 研究開始時の概要: 研究概要:我々は,固相抽出とGC/MS またはLC/MS/MS を組合せた呼気中の 揮発性有機化合物,尿中の8-isoprostane 及びニコチン代謝物の測定法の確立を行った。これ らの手法を用いて喫煙者の酸化ストレスマーカー,ニコチン代謝物及び喫煙行動との関連性を 解析した。その結果,8-OHdG は1 日の喫煙本数,1 日の総吸煙量,尿中コチニンに有意であ った(p<0.05)。iPF_<2α->は,年齢,唾液中コチニン,尿中3-ハイドロキシコチンンに有意であっ た(p<0.05)。一方で,呼気中一酸化炭素と尿中酸化ストレスマーカーとの関連性は,認めら れなかった。 研究成果の概要: 研究実績の概要:
  6. 呼気凝縮液中バイオマーカーの迅速診断法の開発と難治性喘息管理への応用 2010 – 2012 基盤研究(C) 片岡 幹男 岡山大学, 大学医保健学研究科, 教授 (50177391) 研究開始時の概要: 研究概要:呼気凝縮液(EBC)を用いて、喘息患者の気道炎症状態を反映する炎症性マーカーを見いだし、point of care testing (POCT)に応用可能な迅速診断法の確立を試みた。EBC中の好酸球性炎症マーカーとして主要塩基性蛋白(MBP)が、好中球性炎症マーカーとしてミエロペルオキシダーゼ(MPO)がELISA法により測定可能であった。POCTとして免疫クロマト法によりEBC中のMBPとMPOを半定量的に測定できる迅速診断デバイスの構築と測定結果の評価を行った。本法によりMPOとMBPが同時に測定できた喘息患者では好中球性マーカーが優位の群と、好酸球性マーカーが優位の2群にわかれることが判明した。気道炎症状態をベッドサイドで把握し、喘息患者の治療、管理に応用可能と考えられた。 研究成果の概要: 研究実績の概要:
  7. ヘムオキシゲナーゼ1による生体保護作用:バイオマーカーとしての呼気一酸化炭素 2006 – 2008 基盤研究(C) 野口 宏 愛知医科大学, 医学部, 教授 (20065569) 研究開始時の概要: 研究概要:集中治療室に敗血症にて入室患者の、血中一酸化炭素(CO)濃度(ガスクロマトグラフィー)、単球中ヘヘムオキシゲナーゼI蛋白量(フローサイトメトリー)、血液中酸化ストレス度(分光高度計)、炎症性サイトカイン(ELISA)等を測定することにより、侵襲による酸化ストレス、ヘムオキシゲナーゼI発現、CO濃度の相関を検討した。その結果、ヘムオキシゲナーゼI蛋白発現と血中CO濃度間に正の相関が認められた。COはNOとともにグアニールサイクラーゼ活性化による血管拡張作用を有するが、それ以外に抗炎症作用も有する。内因性COの起源は、その代謝経路からヘムオキシゲナーゼ系由来と推察されていたが確証はなかった。今回の結果は、内因性のCOとヘムオキシゲナーゼ経路との関連性を強く推察するものである。次にヘムオキシゲナーゼ1を調節する要因として酸化ストレスをはじめとした生体侵襲が重要視されている。今回、APACHE IIによる重症度スコアー、酸化ストレス度、およびヘムオキシゲナーゼI発現間に正の相関が認められた。この結果は、強い侵襲が生体に加わり酸化ストレス度が増加した状態下で、抗炎症作用を有するヘムオキシゲナーゼ1蛋白質が増加している可能性を強く示唆する。ヘムオキシゲナーゼIの上昇しない敗血症患者は予後が悪いことも今回の検討から明らかになっており、ヘムオキシゲナーゼI-CO系は生体防御系として重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 研究成果の概要: 研究実績の概要:
  8. 新しい酸化ストレスのバイオマーカー:呼気一酸化炭素濃度 2006 – 2008 基盤研究(C) 松三 昌樹 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 准教授 (70219476) 研究開始時の概要: 研究概要:医学の発達により心臓や肝臓などに対する侵襲の大きな手術が行われるようになってきた。しかし、手術自体が成功しても、その後、呼吸不全・腎不全などの多臓器不全に陥って死亡する症例が後を絶たない。本研究では、ストレスにより細胞内に誘導される蛋白Heme Oxygenase-1 (HO-1)の酵素反応産物である一酸化炭素(CO)が呼気に排出され、これが臓器不全の指標となり治療に応用できる可能性を示した。 研究成果の概要: 研究実績の概要:

心不全と心腎連関に関する科研費研究87件

心不全は心腎連関ぬきには考えられないのだそうです。心不全と心腎連関に関する最新の研究を網羅するため、KAKENデータベースで採択研究課題を調べてみました。科研費研究が87件見つかりました。

ちなみに採択された研究課題の概要を読むと、科研費計画調書の概要の書き方を学ぶことができます。以下、太字や下線は、私が自分で読み解くときの手がかりとして付したものです。

  1. 心不全における腎交感神経求心路の役割:「腎→脳→心」の臓器連携機序の解明 2021-04-01 – 2024-03-31 基盤研究(C) 小区分53020:循環器内科学関連 篠原 啓介 九州大学, 医学研究院, 助教 (30784491) 研究開始時の概要:心臓病と腎臓病が互いに関連しあう「心腎連関」の機序はいまだ不明な点が多い。交感神経系は心臓や腎臓のコントロールを含む循環調節に重要であり、交感神経活動を最終的に規定するのは脳である。腎臓交感神経求心路の興奮は脳に入力し、交感神経制御に関連することが示唆されている。応募者らは、脳内レニン・アンジオテンシン系の亢進が交感神経活性化を引き起こすことを示してきた。本研究の目的は、「腎交感神経求心路の心不全病態への寄与」を調べ、さらに「腎→脳→心の連携における脳内機序」を明らかにすることであり、特に脳内レニン・アンジオテンシン系に着目した脳内機序を検証する。 研究概要: 研究成果の概要
  2. 心腎連関におけるミトコンドリア代謝 2020-04-01 – 2022-03-31 若手研究 小区分53040:腎臓内科学関連 松浦 亮 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (30847041) 研究開始時の概要:心不全患者における慢性腎臓病(CKD)の合併率は高く、CKDを合併している場合には予後が不良である。しかし、その病態は明らかではなく、有効な治療方法もない。本研究では心不全による腎障害の進展は、腎交感神経活性化を介したミトコンドリア生合成の低下が主病態であるという仮説を立て、それを証明することを目的とした。またミトコンドリア生合成を活性化する物質を投与することで心不全における腎障害の改善がみられることも検証する。 研究概要: 研究成果の概要
  3. 超音波検査で犬の心腎連関を解明できるか:右心室機能と腎うっ血に注目した検討 2020-04-01 – 2023-03-31 若手研究 小区分42020:獣医学関連 森田 智也 岩手大学, 農学部, 助教 (60862282) 研究開始時の概要:人医療において心臓と腎臓の密接な関わり「心腎連関」が心不全患者の寿命に大きく影響を与えていることが近年明らかとなってきた。また心腎連関の主要因である腎臓のむくみ「腎うっ血」を超音波検査で評価することが可能であり、その有用性が示されてきた。しかし犬においての研究はほとんど行われていない。本研究では、臨床例の心疾患犬とモデル犬における検討を行うことで、犬において腎うっ血が実際に起こるのか、もし起こるのならどのような因子によって引き起こされているかを明らかにすることを目的とする。その結果、犬における心腎連関に関する基礎的な情報が得られるとともに、高リスク患者の選別や治療選択への応用が期待できる。 研究概要: 研究成果の概要
  4. 尿細管上皮のNaチャネル発現亢進を標的とした心腎連関に対する新規治療の確立 2020-04-01 – 2023-03-31 基盤研究(C) 小区分53040:腎臓内科学関連 草場 哲郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60367365) 研究開始時の概要:本研究では腎近位尿細管Naチャネルの抑制を標的とした心-腎連関に対する治療法の確立に向けた基盤となる研究を行う。具体的に、①心不全モデルマウスの腎臓でのNaチャネルを中心とした遺伝子発現を網羅的に解析し、候補分子(今回はNaPi2aが第一候補)を同定する。②同分子の遺伝子改変もしくは薬物を用いた機能抑制により、心不全の予後改善、心機能保護効果を検討する。 研究概要: 研究成果の概要
  5. 慢性腎臓病進展における心腎連関の機序解明 2020-04-01 – 2023-03-31 基盤研究(C) 小区分53040:腎臓内科学関連 横井 秀基 京都大学, 医学研究科, 講師 (90378779) 研究開始時の概要:近年、心臓と腎臓の生理学的・病理学的な密接な関係性を「心腎連関」と呼称し、包括的な病態理解・治療介入探索が検討されるようになってきている。心臓・腎臓の一方に生じた障害が、他方にも影響して障害を引きおこすcardio-renal syndrome (CRS)という疾患概念も広く受け入れられている。本研究は心不全マウスを用いて、そのマウスに腎障害を起こすことにより心腎連関の機序を解明する研究である。 研究概要: 研究成果の概要
  6. 心腎連関において長期的運動が酸化ストレスにおよぼす影響について 2019-04-01 – 2023-03-31 若手研究 小区分59010:リハビリテーション科学関連 高橋 麻子 東北医科薬科大学, 医学部, 講師 (20825773) 研究開始時の概要:腎不全と心不全の病態はお互いに密接に関係しており、心腎連関と呼ばれる。このメカニズムには、レニン-アンジオテンシン系、nitric oxide系、交感神経、酸化ストレスが関与していると考えられているが、その詳細は不明である。心不全患者への運動療法の有効性は示されている一方で、腎不全患者の心機能への運動療法の有効性は明らかでない。そこで、腎不全モデルラットを用いて長期的運動が心臓の酸化ストレスに及ぼす影響を検証することを本研究の目的としる。運動療法と薬物療法の併用の有効性を提言し、ひいては心不全・腎不全患者の予後改善、透析導入患者数の減少に寄与できることを期待する。 研究概要: 研究成果の概要
  7. 腎尿細管における受容体随伴性プロレニン(RAP)系による循環調節の解明 2019-04-01 – 2021-03-31 若手研究 小区分53020:循環器内科学関連 木野 旅人 横浜市立大学, 医学部, 客員研究員 (00829608) 研究開始時の概要:心疾患と腎疾患には、共通する病態があり心腎連関と呼ばれている。慢性腎臓病は心血管疾患の強いリスクであり、急性心不全には高頻度に急性腎障害を合併する。レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系や自律神経系が、この病態に深く関与しており、RA系阻害薬、アルドステロン拮抗薬、β遮断薬が臨床応用されている。本研究は、近年明らかにされた、RAA系の新たなコンポーネントであるRAP(Receptor Associated Prorenin:受容体随伴プロレニン)系に注目して、腎尿細管でのRAP系の機能、心腎連関の病態への関与を、遺伝子改変動物を用いて分子レベルで解明することを目的としている。 研究概要: 研究成果の概要
  8. 血液透析患者における歯周病が心血管病に与える影響 2019-04-01 – 2022-03-31 基盤研究(C) 小区分57080:社会系歯学関連 大田 祐子 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (90610973) 研究開始時の概要:慢性腎臓病(CKD)における心血管疾患による死亡原因は最も多く、CKDは心血管病の危険因子であることが明らかになっている。また、歯周病は、心血管病とCKDに共通する危険因子である。歯周病が予防可能、治療可能な疾患であることを考慮すると、歯周病と心血管病の関連を明らかにする意義は大きいが、歯周病とCKDの関連性を検討した臨床研究のほとんどは欧米人が対象で、コホート研究は少ない。本研究では、日本人の血液透析患者を対象とした心血管病データベースを再構築した疫学研究の成績を用いて、心血管病発症とそれによる死亡を標的として、歯周病重症度との関連を評価し、歯周病が心腎連関進展へ与える影響について検討する。 研究概要: 研究成果の概要
  9. 尿毒素による心不全発症・再発の病態解明と新規治療戦略の基盤構築 2019-04-01 – 2022-03-31 基盤研究(C) 小区分53020:循環器内科学関連 伊藤 浩 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90446047) 研究開始時の概要:慢性腎臓病は心血管疾患発症のリスク因子である。心腎連関の主因物質は十分明らかでないが、血液中の尿毒素の一つであるインドキシル硫酸の関与が示唆されている。本研究では、基礎研究として尿毒素が心不全発症に関与する分子病態を動物実験にて明らかにし、心臓における心腎連関の新規標的分子の探索を行う。同時に、臨床研究として血中インドキシル硫酸と心不全発症の関連を前向きの多施設レジストリーにて検証する。このように、基礎と臨床の両面からインドキシル硫酸の心臓への影響を明らかにし、心不全に対する新規治療戦略の基盤を構築する。 研究概要: 研究成果の概要
  10. グルカゴン依存性交感神経制御機構の解明と心血管病での役割ー心事故予防を目指して 2019-04-01 – 2022-03-31 基盤研究(B) 小区分53020:循環器内科学関連 暮石泰子 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60452190) 研究開始時の概要:代表者らは、グルカゴン欠損マウス(Gcg-null)の心臓を解析し、高血圧と心肥大を伴う収縮機能不全性心不全を呈することを発見した(投稿準備中)。その機序には、Gcg欠損により、副腎アドレナリン分泌を制御する責任分子の生理的抑制制御の逸脱が起こり、Adrの過剰分泌を引き起こすことを解明し現在その責任分子X関連シグナリングの探索と、このGcgによる新たな神経―内分泌制御系の病態意義に関して研究を継続している。本研究は糖尿病専門医との連携により代表者らが発見したGcg依存性交感神経制御機構の解析結果を発展応用させ、交感神経活性評価の血液サンプルによる簡便なサロゲート診断法や治療法の開発を目指す。 研究概要: 研究成果の概要
  11. 慢性腎臓病におけるPlGFとsFlt-1の発現不均衡に関する機序の解明 2018-04-01 – 2020-03-31 若手研究 小区分53020:循環器内科学関連 中田 康紀 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (70812379) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:慢性腎臓病患者では心血管疾患が,逆に心疾患患者では腎機能低下が予後に大きな影響を与えている.この心腎連関の機序の一つとして,動脈硬化を促進する胎盤増殖因子(PlGF)とPlGFに拮抗的に働く可溶性Flt-1(sFlt-1)の発現不均衡がある.本研究では既存薬剤である球形吸着炭AST-120の投与によりsFlt-1の発現低下が抑制され,抗動脈硬化作用を示すことが示唆された.また,慢性腎臓病を多く含む急性心不全患者において,血清PlGF値の上昇が予後悪化に強く関連していることを示した.
  12. 臓器連関を介した心機能制御:一酸化窒素を基軸とした糖尿病性心筋症の新たな治療戦略 2018-04-01 – 2021-03-31 若手研究 小区分48030:薬理学関連 三上 義礼 東邦大学, 医学部, 助教 (80532671) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要
  13. 心筋傷害と心筋保護に与えるミッドカインの作用機構の解明と新規心不全治療法の開発 2018-04-01 – 2022-03-31 基盤研究(C) 小区分53020:循環器内科学関連 宍戸 哲郎 山形大学, 医学部, 助教 (60400545) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要
  14. 腎尿細管糖取り込み調節による心腎血管障害治療戦略の構築 2018-04-01 – 2021-03-31 基盤研究(C) 小区分48030:薬理学関連 中野 大介 香川大学, 医学部, 准教授 (30524178) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要
  15. 新しい急性心不全治療戦略構築への基盤的研究-利尿薬反応性とバイオマーカーの応用- 2017-04-01 – 2020-03-31 基盤研究(C) 吉原 史樹 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (70393220) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:急性心不全は呼吸苦や全身浮腫を来し、適切な治療が実施されなければ死に至る病である。高齢化に伴う心不全患者の増加はわが国の社会問題のひとつである。急性腎障害は急性心不全に合併し易く、心不全治療を困難にする重要な要因のひとつである。今回我々は、急性腎障害を合併した急性心不全患者が重症化する際の関連因子を検討した。利尿薬の反応性(単位投与量当たりの尿量)や右心房と右心室を隔てている三尖弁の逆流の程度、尿中バイオマーカーの検討を実施した。
  16. 犬における心不全による膵炎発現のメカニズムの解明と新規の治療法の確立 2017-04-01 – 2020-03-31 基盤研究(C) 福島 隆治 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10466922) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:心不全(HF)を呈した犬において、膵炎の罹患率が高いことが報告されている。また、以前より人医療においても、心機能低下に伴う膵炎の発生が報告されている。そこで、HFがもたらす膵細胞傷害発生のメカニズムを解明するとともに、それに基づいた新しい治療法の確立を目指した。その結果、犬においてHF時の心拍出量と血圧低下に起因し、膵血流量の減少が引き起こされることが明らかとなった。また、それにより膵腺房細胞のチモーゲン顆粒の減少を伴う細胞萎縮が発現することが判明した。この結果を受けて、新しい膵臓障害の治療法の確立を期待しピモベンダンを投与したところ、膵臓の血流量の維持と病理学的変化の軽減が確認できた。
  17. タンパク質アルギニンメチル化修飾の個体機能の解明 2017-04-01 – 2021-03-31 基盤研究(C) 加香 孝一郎 筑波大学, 生命環境系, 講師 (60311594) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要
  18. 臓器連関によるストレス応答機構の解明 2017-04-01 – 2020-03-31 基盤研究(B) 藤生 克仁 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (30422306) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では、心臓の恒常性維持機構として、新たに心臓・脳・腎臓が連携して心臓に圧負荷が掛かった際に、それを補正するシステムが存在することを明らかにした。この恒常性維持機構が機能しないマウスを作成すると、心不全を発症し心不全死した。このことから、この新しい恒常性維持機構は心不全発生と関係している可能性が高い。さらに、新しい臓器間連携として、心臓・脳・臓器Xという連携を発見した。この臓器X内において、心臓へのストレス時の応答を行っており、この反応によって心臓のストレスに対する反応が変化した。このことは、心不全発症に臓器Xも関与していることを示唆した。
  19. 臓器障害・線維化に対するリハビリテーション運動療法の有効性の機序解明 2017-04-01 – 2020-03-31 基盤研究(B) 伊藤 修 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (00361072) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:腎障害モデルにおける長期的運動による糸球体硬化や腎間質線維化抑制効果とその機序を検討した。5/6腎摘腎不全ラットでは、腎のコラーゲン産生低下と分解亢進、腎レニン-アンジオテンシン系の改善が明らかになった。高フルクトース摂取ラットでは、腎内脂肪酸代謝やミトコンドリア機能の改善が明らかになった。高フルクトース摂取は、Dahl食塩感受性ラットにおいて腎レニン-アンジオテンシン系の亢進を伴って血圧上昇、糸球体過剰濾過、腎障害が増強しており、長期的運動はレニン-アンジオテンシン系阻害薬と同様な有効性が明らかになった。
  20. 循環器疾患におけるSDF-1αのバイオマーカーとしての臨床的有用性の検討 2016-04-01 – 2019-03-31 若手研究(B) 植松 学 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (00622151) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:Stromal cell-derived factor-1α(SDF-1α) は炎症性ケモカインの一つで、心血管病の病態に深くかかわっていることが報告されている。本研究は循環器疾患におけるSDF-1αの臨床的意義を明らかにすることを目的とした。その結果、①末梢血のSDF-1α値は心筋梗塞後の二次心血管イベントの予測因子になること、②アンギオテンシン受容体拮抗薬は心筋からのSDF-1αの産生を抑制すること、③腎不全進行の予測因子になることがわかった。SDF-1αは心血管病の臨床病態に深くかかわっており、新しいバイオマーカーになりうる可能性がある。
  21. 心腎連関における新規アペリン受容体リガンドの機能的意義の解明 2016-04-01 – 2018-03-31 若手研究(B) 佐藤 輝紀 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30733422) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究においてまず、心機能調節における、新規APJリガンドELABELA(ELA)の機能的意義を明らかにした。APJ受容体のリガンドはこれまでApelinのみと考えられていたが、新規にELAが同定されたことを受け、そのペプチドを心不全モデルマウスに投与することによって心保護効果を発揮することを明らかにした。Apelin同様にレニンアンジオテンシン系の亢進を抑制する一方で、そのメカニズムはApelinと異なり、ACEを転写性に抑制することを解明した。さらに、腎集合管特異的なELA欠損マウスの作製、機能解析を行った。
  22. 急性腎障害回復後の腎障害進展における病態解明 2016-04-01 – 2019-03-31 基盤研究(C) 土井 研人 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80505892) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では急性腎障害(acute kidney injury: AKI)回復後の慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)進展を動物モデルで再現することを目的とした。大動脈縮窄(Transverse Aortic Constriction:TAC)圧負荷心不全モデルと腎虚血再灌流モデルを組み合わせることで、臨床的に数多くみられる心腎連関症候群を再現し検討を進めた。心不全マウスにおける腎虚血再灌流障害の長期的な影響を線維化進展を中心に検討を行い、交感神経活性の亢進が腎障害に対して保護的に作用しているのではないかという知見を得た。
  23. 心腎脳連関におけるバゾプレッシン系と交感神経系のクロストークの解明 2016-04-01 – 2019-03-31 基盤研究(C) 岩永 善高 近畿大学, 医学部, 准教授 (80360816) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要「バゾプレッシン系と交感神経系のクロストークを心腎脳ネットワークの観点より検討し、その修飾による新規治療の可能性を探ること」を目的とした。心不全モデル動物では、腎臓交感神経切除術、β遮断薬のみならず、イバブラジンも全身および心臓感神経活動を抑制すること、更にはそれを介しバゾプレッシン系にも作用することを明らかにしクロストークの存在を明らかにした。また敗血症性臓器障害モデルにて、腎臓交感神経切除術は心機能障害の発現および生命予後を改善すること、バゾプレッシン受容体ノックアウトマウスでは、更なる心腎機能改善および生命予後改善がもたらされることを明らかにし、両システム遮断の相乗効果も存在した。
  24. 長期的有酸素運動の抗加齢効果とその機序の解明および高齢化社会問題解決策の検討模索 2016-04-01 – 2019-03-31 基盤研究(C) 伊藤 大亮 東北大学, 医工学研究科, 特任助教 (50466570) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要高齢ラット、若齢ラット、運動介入高齢ラット(Sprague-Dawley (SD)ラット)の3群について、心臓・腎臓機能および機序として、一酸化窒素(NO)系、酸化ストレス系、老化関連指標への長期的運動の影響を比較検討した。運動はトレッドミル有酸素運動を2カ月間行った。血圧は3群間で有意差は認めなかった。NO系、酸化ストレス系パラメータは運動で変化が認められる傾向があり、今後解析を進める。老化関連指標の細胞老化特異的βガラクトシダーゼ活性を免疫染色で評価したが、運動介入による変化が認められており、今後統計学的検証を進める。腎臓のその他免疫組織化学的検討においても現在解析中である。
  25. Flt-1系を介する心腎連関分子機序の解明:新規LncRNAの関与 2016-04-01 – 2019-03-31 基盤研究(B) 斎藤 能彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30250260) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要心腎連関の分子機序は十分に理解されていない。本研究では、慢性腎臓病では胎盤由来増殖因子(PLGF)の産生が増加し、PLGFの内因拮抗物質であるPLGF特異的受容体(Flt-1)の可溶性アイソフォームであるsFlt-1の産生が低下することにより、PLGF/Flt-1系が活性化していることを証明した。その結果その下流に存在するMCP-1の活性化が心不全発症に関係していること、また、Flt-1下流でMEKに直接結合し、MEK活性を抑制する新規のLnc RNAXを同定し、それが心肥大や心不全の発症に関係していることを発見した。これらの分子は心腎連関の分子機序に関与し、創薬の対象となる可能性を示した。
  26. 心血管疾患の多臓器連携機序の解明と臨床応用 2016-04-01 – 2019-03-31 基盤研究(B) 眞鍋 一郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (70359628) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要世界的な心不全の急増は医療上の重要な課題となっている。我々はこれまでに、肥満脂肪組織に始まった炎症が遠隔組織に波及し、糖尿病や動脈硬化を促進することを見いだしていた。本研究ではさらに、慢性腎臓病において心不全が増加する心腎連関のあらたなメカニズムを明らかにした。心臓へのストレスに対して体が心臓-脳-腎臓を連携するネットワークによって適切に応答していることを見いだした。
  27. 心臓リハビリテーションによる骨髄老化への有効性の検証 2016-04-01 – 2019-03-31 基盤研究(B) 礒 良崇 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (60384244) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要本研究は、急性心筋梗塞後における運動耐容能に焦点をあて、バイオマーカーとしてmicroRNA(miR)に着目し、その関連性を検討した。網羅的small RNA解析・定量的RT―PCR解析により、急性心筋梗塞の急性期経過中に大きな変動を示す一群のmiRを同定した。その中で、免疫老化関連miRであるmiR-181cが、急性心筋梗塞例の運動耐容能・換気効率と統計学的に相関することが明らかになった。また、心臓リハビリテーションにおける換気効率の改善効果とも関連していた。
  28. 心腎連関における炎症とキニン系、アンジオテンシン系の役割 2016-04-22 – 2019-03-31 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要
  29. 重症心不全における自由水排泄促進に抗する代償機構の解明 2015-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(C) 日浅 謙一 九州大学, 大学病院, 助教 (00380452) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要薬物治療抵抗性心不全症例において、トルバプタン投与後のカリウム排泄率(FEK)亢進は予後不良と有意に相関していることが判明した。トルバプタンは他のナトリウム利尿薬と異なり、カリウム排泄に全く関与しない薬剤であり、投与後の腎におけるカリウム排泄率増加は腎血流量低下もしくはレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系亢進を反映すると考えられ、FEKは利尿薬の中では唯一トルバプタンによる過度の除水を早期に発見することが出来る簡便かつ有用な指標と考えられた。
  30. アクアポリン2で選定したレスポンダーにおけるトルバプタン長期投与の有効性の検討 2015-04-01 – 2019-03-31 基盤研究(C) 絹川 弘一郎 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (00345216) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要リアルワールドに近い患者背景のもとではほとんどすべての心不全患者はレスポンダーであった.しかしながら,以前の検討と著しい違いはトルバプタンを継続投与したレスポンダーでも予後が悪い群が存在することである.トルバプタンの急性期のレスポンスは尿中AQP2/血漿AVP比0.5×10^3以上で担保されるが,予後改善効果はより高い尿中AQP2/血漿AVP比が必要となる可能性がある.多変量解析ではより強い因子としてeGFRが存在し,腎機能低下とともに尿中AQP2/血漿AVP比が低下することを考えると,腎機能が一定以上低下した場合にはトルバプタンの長期継続投与も入院回避効果が少なくなると考えられる.
  31. 深部静脈血栓形成におけるオートファジーのメカニズムの解明とその法医学への応用 2015-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(C) 野坂 みずほ 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00244731) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要血栓陳旧度にともなうオートファジー機能の動態を検討するために,LC3及びp62について実験的マウス血栓における両者の陽性細胞数や,両者の比(p62/LC3 ratio)の変化を明らかにした.血栓溶解過程では,オートファジーが関与していることが明らかとなり,法医診断学的には,血栓中のオートファジーの動態が,剖検例においても血栓の陳旧度判定の有用な指標となると考えられた.
  32. 心不全における腎髄質循環とNa貯留メカニズムの解明 2015-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(B) 伊藤 貞嘉 東北大学, 医学系研究科, 教授 (40271613) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要腎臓は体液・ミネラルの恒常性維持を介して循環血漿量を調節し、心臓は腎臓により調節された血漿量を血液として拍出することから、心機能と腎機能は互いに影響しあっている。従って、心機能の低下は腎機能を低下させ、腎機能の低下は心機能を低下させることとなり、結果として心腎症候群を形成する場合がある。我々は心腎症候群モデル動物として脳卒中易発性高血圧自然発症ラット(SHR-SP)ならびにDahl食塩感受性高血圧(DahlS)ラットを対象として、体液貯留の改善される薬剤数種類を投与して心腎症候群の発症機序解明を試みるべく、検討を行った。
  33. 基礎研究の臨床応用による心血管病の新しい早期診断・予防・治療法の開発 2015-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(B) 佐藤 公雄 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (80436120) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要遺伝子改変動物を用いた基礎研究により、CyPAが肺高血圧症にとって重要蛋白であることを確認した。さらに、ヒト肺高血圧症患者の末梢血での血漿中CyPA濃度の測定法を開発し、患者群で健常者群に比較して、濃度が上昇していることを確認した。さらに、CyPA高濃度群と低濃度群に分け、長期的な予後調査を行ったところ、血漿中CyPA濃度が高い群で、明らかに生命予後が不良であった。さらに、患者由来の組織や血液検体およびハイスループット・スクリーニング(HTS)システムを用い、CyPA分泌抑制・細胞外CyPA受容体阻害に着目した治療薬のスクリーニングを進め、肺高血圧モデルマウスにおける有効性を検証した。
  34. 肺高血圧症の新規標的蛋白に関する基礎的・臨床的研究 2015-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(A) 下川 宏明 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00235681) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要肺動脈性肺高血圧症(PAH)は重篤かつ致死的であり、本質的治療薬の開発が待ち望まれている。PAHの血管平滑筋細胞は癌類似の増殖性を有し、肺動脈抵抗血管の狭小化を来す。そこで、患者由来肺動脈平滑筋細胞(PAH細胞)の網羅的遺伝子解析および各種のオミックス解析により新規病因蛋白の探索を進め、合成病因蛋白によるPAH細胞増殖性試験、血管平滑筋特異的遺伝子欠損マウスでの検証を行い、複数の新規病因蛋白を同定した。また、一部の病因蛋白は血漿中に分泌されることが分かり、患者血清中濃度が、予後予測能を有することが判明した。このように、PAH患者由来の臨床検体を用いた基礎研究の臨床応用研究を進めた。
  35. 都市部地域住民を対象とする血漿Na利尿ペプチドと頸動脈硬化の進展に関する追跡研究 2014-04-01 – 2016-03-31 挑戦的萌芽研究 小久保 喜弘 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (20393217) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要ベースライン時の3239名を対象に、hANP 43 pg/mL以上をhANP高値、BNP 100 pg/mL以上をBNP高値とした。頸動脈エコー検査において、平均、最大内膜中膜複合体厚がそれぞれ、1.1mm、1.7mm以上を平均IMT、最大IMTで有意プラークありと定義した。BNP高値郡において最大IMTプラークの危険度(95%信頼区間)が性年齢調整で、1.28 (1.01-1.61)、多変量調整で1.27 (1.01-1.60)であった。hANP高値と平均、最大IMTとの関係は見られなかった。
  36. 睡眠時無呼吸症候群における腎交感神経と高血圧のメカニズム解明 2014-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(C) 小倉 彩世子 日本大学, 医学部, 助教 (30618202) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要間欠的低酸素は腎臓尿細管においてNCC(The thiazide-sensitive Na+-Cl- cotransporter)の膜への移行を増加させ、食塩負荷によっても持続的に活性化していることが明らかとなった。そのほかの腎臓NaCl輸送体については検討したがNCCの様な変化は認められなかった。またHCTZ(サイアザイド)負荷試験においても間欠的低酸素ではNa排泄が亢進し、NCCが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
  37. 骨格筋由来ホルモンによる心腎連関の新たな治療介入 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(C) 泉家 康宏 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (10515414) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要我々は運動療法の臓器保護作用を骨格筋由来ホルモンの観点から検討した。筋肥大が誘導できる遺伝子改変マウスでは腎疾患モデル後の組織障害が減弱しており、機序として腎臓でのeNOSの活性化が関与していた。骨格筋由来ホルモンを網羅的に探索し、Heme oxygenase-1 (HO-1)とThrombospondin-2 (TSP-2)をスクリーニングした。骨格筋特異的HO-1欠損マウスの解析から、HO-1は血管内皮細胞やマクロファージ由来である可能性が示唆された。TSP-2は心不全患者のバイオマーカーとなりうる可能性が示唆された。本研究成果は骨格筋を中心とした臓器連関の機序解明に寄与すると考えられた。
  38. 心腎連関を考慮した新しい心不全治療の開発 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(C) 浅沼 博司 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 教授 (20416217) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要心不全発症や進展のプロセスに腎機能障害が関与することが報告され、心腎連関として知られている。本研究では、まず前臨床段階研究として、大動物心不全モデルにおいて、慢性腎不全用剤である炭素微粒体(AST-120)投与が腎機能低下および血中インドキシル硫酸(IS)濃度増加を抑制し、心筋アポトーシス・線維化を抑制することで心不全の病態を改善させることが明らかになった。次に、慢性腎臓病を合併する心不全患者でAST-120投与前後のISと心機能を、AST-120を投与されていない患者とでレトロスペクティブに比較検討した結果、AST-120投与群でのみ腎機能が改善しISが低下し、心機能の改善が認められた。
  39. グリコーゲン合成酵素キナーゼ3βのミトコンドリア移行抑制による心不全治療の開発 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(C) 丹野 雅也 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00398322) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要GSK-3β活性によるミトコンドリア透過性遷移孔(mPTP)開孔の機序解明を目的として研究を行った。(1) GSK-3βはvoltage dependent anion channel 2との相互作用によりミトコンドリアへ移行すること、(2) N末端のK15がミトコンドリア移行シグナルの機能に重要であること、 (3) GSK-3βの上流のERKおよびAktは酸化ストレスによりミトコンドリアへ移行し、脱リン酸化されること (4) ERKおよびAktの特異的な脱リン酸化酵素であるDusp5およびPHLPP1は酸化ストレスによりミトコンドリアへ移行することを見出した。
  40. 心臓マクロファージによる不整脈発症機序の解明と治療法開発 2014-04-01 – 2018-03-31 基盤研究(C) 藤生 克仁 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (30422306) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要これまで我々は心臓内に存在している炎症細胞である心臓マクロファージが心臓にどのような役割をしているのかを明らかにすることを検討してきた。この研究の中で我々はまず、心臓マクロファージが心臓の収縮を正常に保つために必要であることを見出した。さらに心臓には収縮を行う機能に加えて、脈を正確に打つという機能がある。心臓マクロファージを除去したマウスは、不整脈を発症することを見出した。このことから、心臓マクロファージのもう一つの機能として心臓の脈を正常に保つことが存在することを明らかにした。
  41. 心-肺腎連関に与えるミッドカインの役割の解明 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(C) 宍戸 哲郎 山形大学, 医学部, 助教 (60400545) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要腎臓病において、心臓リモデリングが観察されることが知られているが、我々はその肥大に先立って腎臓と血中のミッドカイン濃度が亢進することを見出した。その上昇はGPCR依存性に細胞内シグナルの活性を促、MAPK活性の亢進、ANPなどような胎児型遺伝子発現の亢進と心肥大に関与していた。さらにミッドカインノックアウトマウスで腎臓病モデルを作成すると、これらの細胞内シグナルや心臓肥大が野生型マウスと比べて抑制されており、心不全の進展が抑制されていることを超音波心臓図で確認した。これらのことから、腎臓から発現するミッドカインが心臓リモデリングの進展に関与していることを明らかにした。
  42. 臨床データとエピジェネティックスの統合に立脚した急性心不全の病態解明と治療応用 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(C) 松下 健一 杏林大学, 医学部, 講師 (10317133) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要急性心不全のデータベースの解析を中心に研究を遂行した。左室駆出分画による分類や入院時血圧による分類からの解析で、心エコー指標の有用性の相違や予後増悪因子として知られている急性腎障害合併の危険因子の相違等の臨床的に意義ある結果が得られ、報告を重ねた。また、急性心不全の発生母地としての肥満・メタボリックシンドロームにおけるエピジェネティックスについて纏め、報告した。さらに、急性心不全の病態・予後を規定する心腎連関におけるエピジェネティックスについても纏め、報告した。
  43. 腎除神経による心不全の自律神経概日リズム異常への介入に関する研究 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(C) 平井 忠和 富山大学, 附属病院, 講師 (10303215) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要心不全では交感神経機能が賦活し、心不全の発症・進展に重要な役割を果たしている。最近、腎除神経により全身の交感神経の賦活を抑制できることがわかってきた。本研究では慢性心不全の自律神経機能の日内リズムを評価し、腎除神経により心不全ラットの自律神経機能の異常が是正できるかどうか検討した。腎除神経を施行したラットに心筋梗塞による心不全モデルを作成し、腹部大動脈に挿入した血圧テレメーターの動脈圧波形をスペクトル解析することにより、自由行動下での自律神経機能の日内リズムを評価した。腎除神経により早朝覚醒時の一過性の交感神経機能の賦活および中枢性二酸化炭素化学反射感受性の亢進が是正されることがわかった。
  44. 受容体間相互作用を介した血管平滑筋APJ受容体による血管狭窄メカニズムの解明 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(C) 石田 純治 筑波大学, 生命領域学際研究センター, 講師 (30323257) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要血圧調節に重要な血管の平滑筋細胞で、7回膜貫通型受容体APJを過剰発現するマウス・SMA-APJを作製し、APJ受容体がα1アドレナリン受容体(α1-AR)と機能的に相互作用することで血管の強縮や血圧上昇、心臓冠動脈の狭窄を誘導することを見出した。本研究では、血管平滑筋APJ活性化による血管の収縮反応をマウス心臓で直接証明し、また、APJがα1-ARと物理的に相互作用すること、さらに、細胞内シグナルや血管異常収縮にてAPJはα1A-ARと最も強い協調的な増強反応を示すことが判明し、生体内での血管収縮制御におけるAPJとα1A-ARとの機能的相互作用の重要性を初めて明らかにした。
  45. 進行性臓器障害におけるリハビリテーション運動療法の有効性の機序解明 2014-04-01 – 2017-03-31 基盤研究(B) 伊藤 修 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00361072) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要進行性臓器障害における運動療法の有効性の機序を明らかにするため、高食塩食摂取下のDahl食塩感受性ラットと高フルクトース食摂取下のSprague-Dawleyラットにおいてトレッドミルによる長期的運動の効果を検討した。長期的運動は高食塩食や高フルクトース食による腎機能障害、糸球体効果、腎間質線維化を軽減し、これらの腎保護効果には腎内レニン-アンジオテンシン (RA)系の改善、腎トリグリセライド含有量の低下、xanthine oxidase (XO)活性の抑制を伴っていた。これらの結果から、長期的運動による腎保護効果には、腎内RA系、脂質代謝、酸化ストレスの改善が関与していると示唆された。
  46. PETによる腎臓の新規画像評価法の確立 2013-04-01 – 2016-03-31 挑戦的萌芽研究 伊藤 貞嘉 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40271613) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要本研究ではポジトロン断層法(PET)を用いて腎臓をイメージングによる解析する方法を開発することを目的とした。健常人と末期腎不全患者を対象として[15O]H2O-PETを施行したところ、軽度飲水制限下と飲水負荷後の比較においては有意な変化を認めなかったものの、健常人と比較して末期腎不全患者において腎局所血流量が低下していることが明らかとなり、重要な機能を果たしている腎髄質機能の臨床評価法につながる知見を得るに至った。
  47. 重症虚血性心筋症に対する心移植代替療法の開発 2013-04-01 – 2014-03-31 挑戦的萌芽研究 佐田 政隆 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (80345214) 研究開始時の概要: 研究概要:虚血性心筋症と呼ばれる重症心疾患患者に対して唯一の治療法は心臓移植であるがドナーは絶対的に不足している。そこで、心移植の代替となる革新的治療法の開発を試みた。冠動脈バイパス手術中に得られたヒト心臓周囲脂肪ならびに冠動脈内膜摘出標本の解析から、動脈硬化部位では血管壁のみでなく周囲脂肪組織に慢性炎症が生じていることが明らかになった。また、脂肪細胞死により放出された核酸がマクロファージのTLR9と相互作用することが、脂肪組織における慢性炎症の惹起機構として重要であることが判明した。この知見をもとに、血管と同時に良質の脂肪組織を移植する画期的なバイパス手術法の開発に着手した。 研究成果の概要
  48. 急性腎障害における心腎連関とミトコンドリア障害 2013-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(C) 土井 研人 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80505892) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要心腎連関症候群は、急性および慢性心不全が腎障害を惹起する、あるいは急性腎障害と慢性腎臓病により心疾患が発症・増悪する、という臨床的な観察に基づいて定義されているが、心臓と腎臓という二つの臓器をつなぐ病態メカニズムについては十分明らかにされていない。特に、急性腎障害が原因で心機能低下を呈するとされるType 3心腎連関症候群については基礎的な検討がほとんどなされていなかった。本研究では、腎虚血再灌流モデルを用い、急性腎障害が心臓組織におけるミトコンドリア断片化とアポトーシスを惹起すること、ミトコンドリア制御蛋白の一つであるDrp-1がこの現象において重要な役割を示していることを見出した。
  49. 腎不全合併による循環器疾患増悪の機序解明と新規治療法の開発 2013-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(C) 鈴木 淳一 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (90313858) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要腎不全患者の主な死因は心血管疾患である。腎機能障害が循環器疾患にどのように影響するかを、新しい心腎連関動物実験モデルを用いて検討した。5/6腎臓摘出モデルに心筋梗塞を発症させ、アンジオテンシンII受容体阻害剤(ARB)を投与した。このモデルは無治療で13%しか生存しなかったのに対し、ARB治療により生存率が28%まで改善した。ARBが心筋梗塞後の心機能を著しく改善しており、残存心筋細胞の肥大、炎症細胞浸潤、酸化ストレスを抑制していた。これらの結果より、レニンアンジオテンシン系が腎不全状態における心筋虚血および心不全の増悪に影響していることが明らかとなった。
  50. 可溶性Flt-1のCKD関連心不全における役割と肺水腫発症抑制効果の検討 2013-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(C) 竹田 征治 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (60398443) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要慢性腎臓病(CKD)は、心肥大を呈し心不全をよく合併することは臨床的によく観察されるが、その分子機序は不明であった。今回の研究で、CKDでは慢性炎症や血管新生を惹起するサイトカインであるPLGFの産生が増加し、その内因性の拮抗物質である可溶性Flt-1の産生が低下することによって、CKDで心肥大や心不全の発症に関与していることを、sFlt-1を特異的に欠損するマウスを用いて証明した。PLGFの働きを抑制することや、sFlt-1の産生を増加させることが、CKDに合併する心肥大や心不全の治療に応用される可能性を示した。
  51. 睡眠時無呼吸症候群合併及び非合併心不全患者に対する呼吸補助療法の確立 2013-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(C) 義久 精臣 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (40448642) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要心不全における呼吸補助療法(持続気道陽圧療法、順応性制御換気療法、酸素療法)による心機能、血管機能、呼吸機能、自律神経機能、神経体液性因子、心負荷、心筋障害などに対する多面的な効果について検討を行った。心不全や睡眠時無呼吸症候群の病態に応じた適切な呼吸補助療法を行うことで、心機能、呼吸機能、血管機能や予後など多面的な改善効果が得られた。なかでも、標準的な薬物療法の存在しない左室収縮の保持された心不全に対する呼吸補助療法にて、左室拡張能、血管機能、呼吸機能、運動耐用能、予後の改善を認めた。各結果詳細については、適宜学術誌にて公表を行っている。
  52. リハビリテーション運動療法における一酸化窒素系および交感神経系の役割の解明 2013-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(C) 伊藤 大亮 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50466570) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要高血圧自然発症ラット(SHR)を、偽手術群、除神経処置群、運動群、除神経処置+運動群の4群に分け、トレッドミル運動を8週間施行した。収縮期血圧は、開始後2週間で偽手術群に比較して他3群が低値を示し、最終8週間後では、加えて除神経処置+運動群が除神経処置群と運動群より更に低値を示した。尿中アルブミンクレアチニン比は、偽手術群に比較して他3群が低値、体重当たりクレアチニンクリアランス値は、偽手術群に比較して他3群が高値を示し、両介入共腎機能改善効果が示唆されたが相加効果は認めなかった。その他、血漿および腎組織のノルエピネフリン濃度、NO系、酸化ストレス系、免疫組織化学的検討は現在解析中である。
  53. 腎ミトコンドリア酸化ストレスをターゲットとした慢性腎臓病の治療戦略の開発 2013-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(B) 森 建文 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40375001) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要ラット腎臓髄質ヘンレのループ太い上行脚(mTAL)において、生理的刺激に対するミトコンドリアにおける活性酸素種(ROS)産生について検討を行った。アンジオテンシンII刺激はミトコンドリアROS産生上昇を介して細胞質内ROS上昇を誘導した。高濃度ブドウ糖は糖分解産物産生を介してミトコンドリアROS産生を上昇させた。低酸素はミトコンドリアROS産生を上昇させ、この消去薬であるmitoTEMPO投与は腎虚血再灌流時に低下する腎臓髄質血流量の低下を抑制した。
  54. 動脈壁と周囲脂肪組織における慢性炎症の可視化と病態解明 2013-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(B) 佐田 政隆 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (80345214) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要慢性炎症の起点となるインフラマソームの活性化をCaspase1活性をでFRETを用いて評価する系の確立を試みたが困難を極めた。また他のグループから、当初の計画では低強度の慢性炎症を可視化することが不可能であることが報告された。そこで、慢性炎症の機序を明らかにすることにした。肥大化によって変性した脂肪細胞から遊離したDNA断片が病原体センサーを活性化することで、無菌的慢性炎症の契機となるという仮説を、遺伝子改変マウスやオリゴヌクレオチドを用いた実験で証明した。変性脂肪細胞から遊離するDNA断片が、TLR9を介してマクロファージを活性化することで脂肪組織の慢性炎症を引き起こすことが明らかとなった。
  55. 電気刺激による筋力維持・廃用防止と膀胱機能改善効果の確立:リハ物理療法の新展開 2012-04-01 – 2014-03-31 挑戦的萌芽研究 上月 正博 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70234698) 研究開始時の概要: 研究概要:膀胱尿道カテーテル長期留置者は、一日中活動に制限を受け、感染症罹患率や死亡率が高い。そこで今回、2週間以上膀胱尿道カテーテル留置された虚弱高齢患者(平均年齢83±3.1歳、FIM43±0.3)に対して、腹部電気刺激を行った。電気刺激箇所は、両側腹斜筋部とし、周波数は30Hzで、1日30分間を8週間施行した。介入前後で、肺活量(VC)、1秒量(FEV1)、吸気終末圧(MIP)、呼気終末圧(MEP)、最大呼気流気量(PEFR)の測定を行い、さらに日常生活動作を測定した。その結果、対照群では低下がみられたが、介入群では、VC、FEV、MEPは改善し、感染症や死亡による脱落もなく安全に実施できた。 研究成果の概要
  56. 心臓手術後心房細動発生のメカニズム解明に関する臨床研究 2012-04-01 – 2016-03-31 基盤研究(C) 瀬在 明 日本大学, 医学部, 講師 (70350006) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要本研究で我々はその発生を予防するために術前に術後心房細動を予測しうる因子を特定することが目的である。本研究で、術後心房細動は24%に認め、その発生危険因子は、75歳以上、慢性腎臓病、緊急手術、体外循環時間>180分、術中カルペリチドと塩酸ランジオロール非使用、術前ARB、β遮断薬非使用、術前カルシウム拮抗薬、スタチン使用、術後β遮断薬非使用であった。術前ANP、angiotensin-II, KL-6, ヒアルロン酸、1型コラーゲンC端テロペプタイドは心房細動発生の新しいマーカーになりうると考えられた。線維化と術前、術中、術後の薬剤が術後心房細動に強く関与していることも明らかにされた。
  57. 大動脈瘤形成過程におけるHMGB1蛋白の役割 2012-04-01 – 2015-03-31 基盤研究(C) 安斉 俊久 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (60232089) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要核内非ヒストン蛋白であるHMGB1は、強力な炎症反応を惹起することが知られている。我々は、大動脈瘤形成過程におけるHMGB1の役割を明らかにするため、塩化カルシウム刺激によるマウス大動脈瘤モデルを用いて検討を行った。HMGB1中和抗体の投与により、6週後の腹部大動脈瘤径縮小、炎症細胞浸潤の軽減、大動脈中膜層の菲薄化とエラスチンの波状構造の破壊軽減が認められた。同時に、HMGB1発現の低下、Mac-3陽性マクロファージの浸潤軽減、MMP-2、MMP-9の活性低下、TNF-α、CD68、MCP-1の発現低下が認められ、HMGB1が炎症惹起を介して、大動脈瘤進展を促進している可能性が示唆された。
  58. 慢性心不全における東洋医学的アプローチの有用性に関する検討 2012-04-01 – 2015-03-31 基盤研究(C) 伊澤 淳 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (50464095) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要心腎連関を呈する慢性心不全症例を対象とし,従来の内服薬に加えて最大7.5 g/日の防已黄耆湯を併用し,平均3.5ヵ月および9.4ヵ月後の有効性と安全性を評価した。BUN値, 血清クレアチニン値, 推定糸球体濾過量,脳性ナトリウム利尿ペプチドを測定した結果,いずれも治療経過中に有意に改善した。心不全および腎機能の両面において防已黄耆湯の利水作用は有効であり,治療経過中の安全性も確認できた。
  59. 心腎貧血連関ネットワークの解析と新規治療戦略の開発 2012-04-01 – 2015-03-31 基盤研究(C) 増山 理 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70273670) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要心不全・腎不全・貧血連関の分子機構について、鉄代謝調節機構に着目し、基礎および臨床研究より検討した。心不全モデル及び慢性腎臓病モデル動物を用いた検討より、十二指腸鉄吸収蛋白の発現異常が明らかとなり、これが心不全・腎不全・貧血連関の増悪因子の一つであることを示された。また、臨床研究より心不全患者には貧血や鉄欠乏合併例が多く、心不全患者の鉄吸収能は貧血合併例で低下傾向にあることも明らかになり、十二指腸における鉄吸収能を改善することが心腎貧血連関ネットワークの新たな治療標的になることが示唆された。
  60. 慢性腎臓病の基盤病態と心血管病との連関機序の統合的理解と新規治療法開発 2012-04-01 – 2015-03-31 基盤研究(B) 柏原 直樹 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10233701) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要慢性腎臓病CKDは末期腎不全のみならず、脳卒中、心血管病、認知機能障害等の独立したリスク因子である。アルブミン尿はごく微量から心血管病と強く連関している。血管障害の最早期病態は内皮障害と微小炎症である。アルブミン尿が内皮障害を反映すると想定されてきたが、糸球体内皮が有窓性であるため、仮説に止まっていた。微小循環動態、透過性変化を生体において解析しうるin vivo imaging技術を確立し、血管内皮障害の役割を解明した。加齢腎、腹膜組織線維化にも内皮障害が関与することも明らかにした。CKDと心血管病の共通基盤病態は内皮機能障害であり、CKD・心血管病予防・治療のための標的病態を確定した。
  61. 鉱質コルチコイド/糖質コルチコイド受容体パラドックスの解明と腎臓病治療への応用 2012-04-01 – 2015-03-31 基盤研究(B) 長瀬 美樹 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60302733) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要本研究では、Rac1によるMR活性化と臓器障害の機序につき検討した。足細胞特異的Rac1活性化、同Rac1 KOマウスは足細胞障害、アルブミン尿、糸球体硬化を自然発症し、Rac1活性とMR活性、MR阻害薬の保護効果が平行していた。マクロファージや心筋特異的Rac1/MR KOマウスでは心腎障害が軽微であった。肥満糖尿病性腎症、TAC心障害モデル、Ang II/食塩腎障害モデル、皮膚老化モデルにおいてRac1やMRの活性化、慢性炎症が関与し、Rac阻害薬やMR拮抗薬により病変が改善した。以上、Rac1-MR系の標的細胞とシグナルカスケードを同定し、この系が関与する新たな病態を明らかにした。
  62. 心臓病と腎臓病の臓器間相互作用(心腎連関)を制御する分子機構の解明と新規治療戦略 2011 – 2013 若手研究(B) 藤生 克仁 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30422306) 研究開始時の概要: 研究概要:腎臓の集合間上皮細胞が腎臓の炎症を惹起するために重要な細胞であることを初めて見出した。その機序として転写因子KLF5は定常状態ではCdh1遺伝子を転写調節しているが、腎臓ストレス時には、S100A8, S100A9を誘導し、炎症性マクロファージを骨髄から腎臓へリクルートすることによって腎臓の炎症が惹起されることを見出し、Journal of Clinical Investigationに発表した。 研究成果の概要
  63. Endothelin-1(ET-1)高値は腎不全悪化の予知因子である。 2011 – 2012 若手研究(B) 横井 加奈子 久留米大学, 医学部, 助教 (80569385) 研究開始時の概要: 研究概要:血漿エンドセリン-1(ET-1)は強力な血管収縮物質である。血漿ET-1の上昇は心血管疾患及び悪性腫瘍患者の予後マーカーである。しかし、これまでに住民検診の場で多人数に対してET-1を測定した報告はなく、本研究は10年に及ぶ予後調査の結果から、世界において初めて血漿ET-1の上昇が健常者において死亡の予知因子であることを立証した極めて意義深い研究である。しかし10年の追跡調査において血漿ET-1上昇は総死亡と有意な関連を認めたものの、死亡原因として多い、脳・心血管死および癌死との関連は得られず、さらに追跡調査を行うことにより臨床的エビデンスが得られると考えられる。今後、死因別に血漿ET-1がどのように関連しているのかを分析し、予防法や治療法にまで言及することが期待される。 研究成果の概要
  64. 心不全における脳自律神経異常のシステム同定とバイオニック心不全治療の探索 2011 – 2012 若手研究(B) 佐田 悠輔 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (70570258) 研究開始時の概要: 研究概要:心不全の最多原疾患である高血圧(高血圧性心肥大)ラットにおける自律神経制御機構(脳特性および末梢特性)をシステム生理実験により解析し、脳特性の異常(血圧に対する交感神経応答の亢進)を突き止め、一方の末梢特性(交感神経活動に対する昇圧反応)は正常であることを明らかにした。更に、腎臓交感神経除神経による自律神経介入治療を行い、脳特性異常の是正による降圧効果を確認した。しかし、正常血圧対照ラットと比較すると、脳特性の完全な正常化には至らなかった。 研究成果の概要
  65. 心不全における心腎連関のメカニズム-機能的腎予備力評価からのアプローチ- 2011 – 2013 基盤研究(C) 真野 敏昭 大阪大学, 医学部附属病院, 講師 (90379165) 研究開始時の概要: 研究概要:心不全における腎機能障害は重要な予後規定因子であるが、腎機能障害が心不全の病態にどのような影響を持っているかについては不明な点が多い。本研究では、心不全のうち特に拡張不全患者における機能的腎予備力評価を、腎血流ドプラを用いた生理学的指標、探索的研究による生化学的代謝指標を用いて行い、腎動脈抵抗が拡張不全患者で増加しており、また特異的な免疫因子の拡張不全患者血中での増加が認められ、心機能と関連があることがわかった。 研究成果の概要
  66. 心不全の心腎連関における自律神経機能の概日リズム異常に関する研究 2011 – 2013 基盤研究(C) 井上 博 富山大学, 事務局, 理事・副学長 (60151619) 研究開始時の概要: 研究概要:ラット心不全モデルにおいて慢性腎臓病の自律神経機能の概日リズムへの影響を検討するため、雄性ラットを用いて5/6腎摘除し、さらに左冠動脈結紮による心筋梗塞を作成し慢性腎臓病合併心不全モデルを作成した。自律神経機能の概日リズムを評価するため、腹部大動脈に挿入した超小型血圧テレメータから送信される動脈圧波形をA/D変換し,24~48時間連続的にラットの自由行動下で記録した。拡張期血圧のスペクトル解析の結果、交感神経活動を反映する低周波成分は、慢性腎臓病合併ラットにおいて早朝覚醒期に一過性に亢進しており、その交感神経の賦活は、間歇的二酸化炭素負荷により評価した中枢性化学反射感受性と関連していた。 研究成果の概要
  67. 細胞間接着装置の障害としての蛋白尿ー他臓器疾患との関連ー 2011-04-01 – 2014-03-31 基盤研究(B) 河内 裕 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60242400) 研究開始時の概要: 研究概要:蛋白尿と他臓器疾患の発症に関連がある分子としてEphrin-B1とSV2Bを同定し、これら分子の性状、機能解析を行った。Ephrin-B1は、神経細胞の軸索誘導に関与する分子で、腎ではポドサイトの膜部に局在し、細胞外部でネフリンと結合しスリット膜のバリア機能維持に重要な役割を果たしていることを明らかにした。シナプス小胞関連分子であるSV2B、その関連分子がポドサイトに発現していることを観察した。KOマウスを用いた検討で、SV2Bはスリット膜、足突起、基底膜の形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした。これらの観察はポドサイト障害と他臓器疾患の関連を考えるうえで極めて重要な知見である。 研究成果の概要
  68. 難治性コモン不整脈における遺伝子ー環境因子相互作用:GWASデータに基づく検討 2011-04-01 – 2014-03-31 基盤研究(B) 古川 哲史 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (80251552) 研究開始時の概要: 研究概要:不整脈の疾患研究では、心房細動と心室細動の機序と対策が問題として残されている。全ゲノム関連解析(GWAS)は網羅的な遺伝的リスクの検討で、今まで同定されなかった疾患パスウェイが同定される可能性がある。そこで、自験・他験の心房細動、心室細動/心臓突然死に関するGWASから得られた新規遺伝子と心房細動・心室細動の関係を生物学的に検討した。その結果、心房細動は1つの不整脈のトリガーに関係する強い遺伝的リスクと複数の不整脈の維持に関係する弱い遺伝的リスクがあることが分かった。心室細動では、His-Purkinje系に発現する転写因子が運動誘発性不整脈に関連することが明らかとなった。 研究成果の概要
  69. 臓器連関と慢性炎症による心血管疾患発症・進展分子機構の解明と診断・治療法への応用 2011-04-01 – 2014-03-31 基盤研究(B) 眞鍋 一郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70359628) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究計画は、メタボリックシンドロームによる心血管系での慢性炎症プロセス惹起とそれによる病態進行機序を解析し、また、臓器連関によって、さらに病態と臓器機能障害が拡大する可能性を検討した。その結果、肥満脂肪組織から放出が増加する遊離脂肪酸が、心血管系での炎症を誘導するという心血管-脂肪連関がメタボリックシンドロームにおける心血管疾患リスクの増大に重要であることを見いだした。また、心-腎連関が心臓のストレスへの応答に重要であるとともに、心不全の進展にも寄与することを明らかにした。また、この臓器連携のメディエータが病態を修飾することを見いだした。 研究成果の概要
  70. リハビリテーション運動療法の多面的効果における臓器連関の機序解明 2011-04-01 – 2014-03-31 基盤研究(B) 伊藤 修 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00361072) 研究開始時の概要: 研究概要:Wistar-Kyotoラット(WKY)と高血圧自然発症ラット(SHR)において、長期的な運動による大動脈のnitric oxide (NO)合成酵素(NOS)発現増強効果はNADPH oxidase依存性であり、腎のNOS発現増強効果はWKYではNADPH oxidase依存性、SHRではxanthine oxidase依存性であることを明らかにした。食塩感受性高血圧ラットにおいても、長期的な運動は腎保護作用を有することを明らかにし、その作用機序は 血圧とは独立したものであり、運動による酸化ストレスの軽減、NO産生系、腎アラキドン酸代謝の改善が関与している可能性が示唆された。 研究成果の概要
  71. 腎臓リハビリテーション:有効性の機序解明と臨床応用 2011-04-01 – 2014-03-31 基盤研究(A) 上月 正博 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70234698) 研究開始時の概要: 研究概要:長期的運動の腎保護相加・相乗作用およびその機序をラットで検討し、運動療法を腎不全患者に適用して、それらの臨床的有効性を検証した。慢性腎不全ラットにおいて、長期的運動とアンジオテンシンII受容体拮抗薬の併用療法は腎保護効果を示し、カルボニルストレス軽減の関与が示唆された。食塩感受性ラットにおいても長期的運動は腎保護作用を示し、酸化ストレスとNO産生系の改善の関与が示唆された。透析中の運動療法に使用できる、安価・軽量で、負荷量を調整できるエルゴメータを開発・試用し、透析中の血圧過降圧の頻度の減少、身体機能やQOLの向上を認めた。 研究成果の概要
  72. 貧血合併心不全における分子機構解明と新規治療への応用 2010 – 2011 若手研究(B) 内藤 由朗 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10446049) 研究開始時の概要: 研究概要:貧血、特に鉄欠乏性貧血が心機能に及ぼす分子機構について、ノックアウトマウスを用いた基礎研究より検討した。エリスロポエチン(EPO)受容体ノックアウトマウスを用いた検討より、鉄欠乏による貧血合併心において心臓の内在性EPO-EPO受容体を介したシグナル伝達系が心保護に作用していることが示された。一方、アンジオテンシンII受容体(1a型;AT1aR)ノックアウトマウスを用いた検討では、鉄欠乏による貧血合併心において腎臓AT1aRを介したEPOが心保護に作用していることが示唆された。以上より、貧血合併心不全において腎臓AT1aR-EPO-心臓EPO受容体を介した経路が心保護に作用していることが示された。 研究成果の概要
  73. 慢性心不全患者における悪性新生物の発生・進展に関するコホート研究 2010 – 2012 基盤研究(C) 柴 信行 東北大学, 大学院・医学系研究科循環器内科学分野, 非常勤講師 (60374998) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究では、心血管疾患症例(N=10,114)における悪性新生物の既往と予後に関する検討を行った。症例は平均68±12歳、男性は70%、悪性腫瘍の既往は12%であった。悪性腫瘍の既往がある症例は、既往のない症例と比較し高齢で男性が多く、特に心不全症例ではBMIが低く、収縮期血圧が低く、心拍数が早かった。約3年間の追跡では悪性腫瘍の既往のある症例は、心血管疾患のステージ(BまたはC/D)に関係なく予後不良であった。 研究成果の概要
  74. KLF転写因子による生活習慣病・癌の病態分子機構解明と治療応用 2010-04-01 – 2015-03-31 基盤研究(S) 永井 良三 東京大学, 医学部附属病院, 名誉教授 (60207975) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要KLFファミリーはzincフィンガー型転写因子であり、現在17種類が知られている。本研究では、KLF5とKLF6に着目し、生活習慣病とがんにおける機能の解明をめざした。心臓においては心筋細胞ではKLF6が、線維芽細胞ではKLF5が働き、心臓肥大や線維化を制御している。また、KLF6は大動脈瘤と解離の病態に重要である。腎臓においては、KLF5が腎傷害に対する炎症を制御しており、慢性腎臓病に寄与することを見いだした。またKLF5が大腸癌と関連することを明らかとした。本研究で明らかにされたメカニズムは、新しい治療法や診断法開発の標的となる。
  75. 心腎連関におけるレニン-アンジオテンシン系の役割の解明 2010 – 2012 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要:生活習慣病の広がりに伴い、糖尿病や高血圧に関連した腎機能障害患者数が著しく増えている。腎不全をもった心疾患患者はより重度の心不全を引き起こすことや治療効果の低下が問題点である。この現象は「心腎連関」とやばれており、この病態を明らかにすることは医学的に解決すべき重要な点である。「心腎連関」の病態解明と治療法の開発が進まないのは、適切な疾患解析モデルがこれまでに開発されていないためと考えられる。腎不全の存在により心筋梗塞後の進展が助長されることを確認でき、その病態機序の一つとしてレニンの上昇とそれによる酸化ストレスの産生によりこの現象が引き起こされていることを証明した。この研究は論文として学術誌への掲載が決定した。これにより心腎連関の新しいモデルとしての可能性や新たな病態機構の解明に繋がる研究だと考えている。またこの実験モデルの良い点は、糖尿病モデル等による糖代謝異常を起こすことがなく腎不全を誘導できることが可能なため、腎機能の低下が直接的に心機能の低下を誘導する証拠となることが示唆される。更なる心臓と腎臓をつなぐ因子として自然免疫についても検討している。腎臓の傷害によって産生されるHMGB-1やATP、AGEはそれぞれTLRやP2×7、RAGEに結合する。これにより自然免疫が助長されその後の炎症を誘導することが知られている。これらのノックアウトマウスを用いてこの病態に対する影響を確認することにより、更なる心腎連関の機構の解明と新たに治療法の確立に役立つと考えている。 研究成果の概要
  76. 心臓組織内の内皮細胞を起点としたシグナルネットワークによる心筋保護の分子機構 2009 – 2011 基盤研究(C) 中岡 良和 大阪大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (90393214) 研究開始時の概要: 研究概要:心筋から分泌されるangiopoietin-1(Ang1)の機能を解明するため、Ang1 floxマウスを作成してα-MHC-Creマウスと交配して、心筋特異的Ang1欠損(Ang1CKO)マウスを作成した。Ang1 CKOマウスはE12. 5-E14. 5で胎生致死を呈し、(1)心内膜と心筋肉柱層の接着不全、(2)心筋肉柱と緻密帯の発達不全、(3)冠血管形成異常などの表現型を呈した。Ang1 CKOマウスと野生型マウスの心臓で内皮細胞を抗CD31抗体で免疫染色すると、野生型で心室壁の心外膜直下と一層内側に形成される冠静脈と冠動脈の2層の血管構造のうち、外側の冠静脈のみがAng1 CKOマウスで特異的に欠損していた。 研究成果の概要
  77. 薬剤溶出性ステント後の再内皮化誘導療法に関する研究 2009 – 2011 基盤研究(C) 野出 孝一 佐賀大学, 医学部, 教授 (80359950) 研究開始時の概要: 研究概要:ヒト末梢血単核球の培養にて、シロスタゾール処理で内皮細胞への分化が誘導されることが示された。又PKA阻害薬がシロスタゾールの内皮細胞誘導作用を抑制することが明らかになった。臨床研究の方は、シロスタゾールはSESによる血管内皮再生遅延を改善する明らかな効果は認められなかった。 研究成果の概要
  78. 心不全患者,虚血性心疾患患者に対する新たな診断マーカー 2009 – 2011 基盤研究(C) 長谷川 洋 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助教 (50375656) 研究開始時の概要: 研究概要:心不全患者の血液サンプルを用いて,既知の血中因子や治療薬の心不全との関連,および,新規心不全関連血中因子の探索を目標とた。血中P53抗体は,本来変異p53に対するもので,循環器疾患患者において,優位な変化は認められなかったが,患者末梢血由来mRNAの発現変化をみたところ,p53および関連する因子に年齢および各種危険因子と相関する変化が認められた。一方,心不全において,心不全の進展に大きく関連している,各種のアンジオテンシンII受容体拮抗薬(angiotensin II receptor blocker, ARB)を投与している患者において,各種因子と内服しているARBの種類から,ARBの作用の薬剤間の違いについて検証を行ったところ,テルミサルタンはロサルタン内服患者に比較して,動脈硬化進展のサロゲートマーカーである内頚動脈壁厚(IMT)の進展が有意に抑制されており,一方,やはり心血管疾患の予測因子である血中尿酸値は,ロサルタン内服患者で低い傾向にあることが示された。また,カンデサルタン内服患者では,家庭血圧測定において,心血管死と大きく関連する早朝高血圧が改善されていることを明らかにした。 研究成果の概要
  79. 熱ショック蛋白と酸化的DNA塩基損傷修復による心血管リモデリング抑制の研究 2009 – 2011 基盤研究(C) 長谷部 直幸 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30192272) 研究開始時の概要: 研究概要:動脈硬化性心血管障害の主要な機序として酸化ストレスによるDNA塩基損傷がある。この修復に関わる塩基除去修復(base excision repair : BER)機構の主要酵素であるApe1に着目し、Ape1の障害心血管局所での発現亢進を検出し、遺伝子導入による心血管リモデリングの抑制効果を明らかにした。また、温熱刺激(41℃)が熱ショック蛋白(HSP)72の発現亢進を介して酸化ストレス軽減効果をもたらすことを明らかにし、両者の相加的な抗動脈硬化作用が、心血管リモデリング抑制の新たな戦略となる可能性が示唆された。 研究成果の概要
  80. 慢性腎不全における心血管病発症の分子機構:血管内皮機能の視点から 2009 – 2011 基盤研究(B) 今泉 勉 久留米大学, 医学部, 教授 (60148947) 研究開始時の概要: 研究概要:心・血管・腎連関は臨床的に注目されているが、その分子メカニズムは不明である。本研究は、腎不全患者の血中において上昇が報告されているAsymmetric Dimethylarginine(ADMA)が血管内皮機能障害を引き起こすことが、心腎連関の重要なメカニズムであることを初めて明らかにした。さらに、ADMAの従来報告されていたL-アルギニンアナログとしての内皮型NO合成酵素(eNOS)阻害作用とは独立したeNOSリン酸化抑制作用が、このADMAによる内皮機能障害を起こすことを報告した。 研究成果の概要
  81. 心筋リモデリングにおけるミトコンドリア転写因子制御の分子機構の解明と治療への応用 2009 – 2011 基盤研究(B) 筒井 裕之 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70264017) 研究開始時の概要: 研究概要:活性酸素は、ミトコンドリアDNA・機能障害をもたらし、さらなるミトコンドリア酸化ストレスと細胞障害を引き起こす。酸化ストレスは肥大・アポトーシス・細胞外マトリックスリモデリングを惹起する。心筋リモデリングにおけるミトコンドリア転写因子による機能制御機構を解明するとともに、ミトコンドリアDNA・ミトコンドリア機能の保持による心筋保護基盤をあきらかにした。さらに、これらは心筋リモデリング・心不全の形成・進展に密接に関与した。 研究成果の概要
  82. 生活習慣病の病態におけるアルドステロン/鉱質コルチコイド受容体活性化機構の解明 2009-05-11 – 2014-03-31 基盤研究(S) 藤田 敏郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員、名誉教授 (10114125) 研究開始時の概要: 研究概要:私達はアルドステロンがRac1を介して直接受容体(MR)を活性化することを報告した(Nat Med 2008)。本研究でRac1-MR活性化が腎糸球体足細胞で糸球体障害、腎尿細管細胞で食塩感受性高血圧の原因となり(JCI 2011)、メタボリックシンドロームの臓器障害に関わることを示した。一方、糖質コルチコイド受容体は交感神経亢進からWNK4-NCC系を介し食塩感受性高血圧を発症させることを発見した(Nat Med 2011)。この過程にエピジェネティクスが関わっていた。食塩感受性高血圧及び臓器障害発症の新機序を確立し、心腎連関形成でのエピジェネティックス研究へと発展させることが出来た。 研究成果の概要
  83. 循環器疾患におけるアルドステロンの病態生理学的研究 2008 – 2010 基盤研究(C) 吉村 道博 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30264295) 研究開始時の概要: 研究概要:アルドステロンは心不全の病態に深くかかわっているが,副腎における古典的アルドステロン産生経路に加え,近年我々は心臓でもアルドステロンが産生されていることを報告した.今回の研究では,これまで神経終末にのみ存在が知られていたN型カルシウムチャネルが実は副腎におけるアルドステロン産生について深く関与していることを初めて報告した。また,心臓での組織アルドステロンの産生についても食塩や糖濃度,時間の関与が強く示唆された。これらの知見は将来的に糖と食塩と心疾患の関連の解明と心血管病の新たな治療戦略の開発に重要な意味をもたらすものと考えられる. 研究成果の概要
  84. 慢性心不全におけるthrombospondinのβ遮断薬反応性への関与と機序 2008 – 2010 基盤研究(C) 竹本 恭彦 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 非常勤講師 (20364002) 研究開始時の概要: 研究概要:非虚血性慢性心不全例へのアドレナリンβ受容体遮断薬治療前後で、thrombospondin-1濃度へのthrombospondin-1Ala523Thr多型(G/A)の影響は認めなかった。thrombospondin-1濃度のアドレナリンβ受容体遮断薬投与前と開始後12ヶ月後の間の変化は、BNPの同期間中変化と相関し、慢性期血行動態安定化へのthrombospondin-1の関与が推察された。 研究成果の概要
  85. 心腎連関の基盤たる分子機序の解明 2008 – 2010 基盤研究(B) 斎藤 能彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30250260) 研究開始時の概要: 研究概要:心腎連関が大変注目されているが、分子機序は不明である。今回、我々は、腎機能の低下に伴い可溶型Flt-1の体内での発現が減少し、相対的にPlGF/Flt-1系が活性化することにより動脈硬化が増悪すること、また、糖尿病性腎症でKlotho遺伝子の発現が特異的に低下し、尿中Ca排泄が増加し、動脈硬化の増悪に関連する可能性を示した。 研究成果の概要
  86. 心血管ストレス応答におけるミトコンドリア活性酸素シグナル制御 2008 – 2012 新学術領域研究(研究領域提案型) 生物系 筒井 裕之 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70264017) 研究開始時の概要: 研究概要:ミトコンドリアの生体維持機能は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)によって動的に制御されている。近年、mtDNAの酸化損傷およびそれに起因する活性酸素の過剰産生が、種々の疾病の発症、さらには老化にも関与することがあきらかにされ、疾病発症の共通基盤としてのミトコンドリア機能不全が注目されている。本研究では、心血管ストレス応答におけるミトコンドリア転写因子およびミトコンドリア酸化ストレスの役割をあきらかにした。 研究成果の概要
  87. 成人した先天性心疾患患者の管理における心機能、運動耐容能と神経体液性因子の意義 2006 – 2007 基盤研究(C) 武田 裕 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 助教 (70381837) 研究開始時の概要: 研究概要:平成18年度に引き続き研究を継続し、通算で成人先天性心疾患患者20名からデータを収集した。NYHA心機能クラスは2.4±0.6で、問診法による運動耐容能は5.1±1.3METsであった。単変量回帰分析によると、血漿エンドセリン-1濃度(標準化回帰係数[β]=-0.446,p=0.049)、尿中ノルエピネフリン濃度(β=-0.536,p=0.015)、尿中バイオピリン濃度(β=-0.535,p=0.015)がそれぞれ運動耐容能と逆相関した。SpO_2が90%以上か未満かで分けた場合、低酸素を呈する群で運動耐容能が低い傾向があった(β=0.396,p=0.084)。一方、血漿ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド濃度は理論に反して運動耐容能と正相関した。前方ステップワイズ法で変数を選択して重回帰分析を行うと、低酸素の有無(β=-0.439,p=0.023)と尿中ノルエピネフリン(β=-0.569,p=0.005)が有意な因子として残った。尿中ノルエピネフリンと尿中バイオピリンとの間に強い正相関を認めた(β=0.806,p<0.001)。本研究において、脳性ヒトナトリウム利尿ペプチドが重症度の指標性を失っていることを示し、これに代わり尿中ノルエピネフリン、尿中バイオピリン、血漿エンドセリン級が重症度指標となりうることを示した。また、尿中ノルエピネフリンと尿中バイオピリンが強い相関を示すことから、酸化ストレスの制御や交感神経の過剰充進の制御が、成人先天性心疾患の治療戦略となる可能性があるとの知見を得た。 研究成果の概要

アンケート調査に基づく研究デザインの実践

アンケート調査票を作成のための仮説の必要性

  1. 仮説構築と調査検証 株式会社 日立インフォメーションアカデミー 調査結果を考察することで「何が言えそうか」という新たな仮説が導けます。その新たな仮説を調査検証することで、さらに深い仮説が導けます。仮説検証は繰り返すことでより高い価値を発揮します高い価値を発揮します。
  2. アンケートの計画
  3. アンケート調査実施前の注意点ー計画編ー アンケート調査には、2つの種類があります。①発見型アンケート②仮説検証型アンケート
  4. アンケート調査を成功させるコツ Point1. 調査目的を明確にする  調査結果をどう活用するかが明確に定まっていないと、調査をやっただけで終わってしまうことがあるため、調査を実施する前に、「今回の調査結果をもとに、どのようなアクションを起こすのか」を決めておくことが重要です。Point2. 調査課題をモレなく整理する 調査課題とは、調査の目的を達成するために、得るべき知見のことです。 Point3. 仮説を立てる アンケート調査の本質は、仮説検証です。仮説を立てる際に重要なのが、検証により仮説が肯定された際の次のアクションまでがきちんと描かれていることです。 
  5. アンケート調査の方法とコツ② 課題設定~仮説構築~調査手法の選び方編 手法 ネットリサーチ 2019.07.26 アンケート調査の企画をする時には、具体的な方法や質問の内容を考え始める前に、解決すべき課題の設定仮説の構築~調査の企画というプロセスが必要です。ここで重要なのは、調査結果が課題の解決に向けたアクションに繋がるように企画することです。このプロセスでしっかり準備することが、調査結果の価値の大半を決めます。問題の原因を次のアクションにおとしこめるレベルまで具体化することで、アンケート調査の結果をマーケティングに活かすことができる 最初に考えた仮説が本当に原因であるとは限りません。考えられる原因=仮説を出来るだけアンケート調査に盛り込んでおく
  6. マーケティングリサーチの成功の秘訣は「仮説」にある 2018 / 02 / 15 市場調査における仮説は成功の鍵 現状仮説とは具体案を提示する際に「現在の状況は、このような状態になっているのではないか」という推測です。実行仮説とは(戦略推定ともいう)ビジネス展開するにあたり「このような方法で実行すればうまく行くのではないか」という仮定です。現状推定は次の実行推定の立案に結びつくような項目でなければならない。想定作りの前の事前調査の方法は、インターネットは基より実際の現場を訪れて生きた情報を集める事が大切である。
  7. 調査仮説の立て方 「調査仮説」がない場合 例えば、「売上不振の理由(商品の不満内容)を把握したい」というだけでは、調査設計まで落とし込めません。「調査仮説」がある場合  例えば、「売上不振の理由(商品の不満内容)は、 商品パッケージのデザインが良くないからだと考えられる」という仮説がある場合、その仮説に沿って踏査を設計することができます。
  8. https://www.advertimes.com/20180308/article266951/ 考察 → 分析 → 設計 という順で考えていく 調査項目を考える、いわゆる調査設計から考え始めると、必ずと言っていいほど後から『あれも聞けば良かった、こう聞けば良かった』という声が聴かれる
  9. https://www.and-d.co.jp/researches/form-hypothesis/ マーケティング上の課題を整理し、リサーチによって明らかにすべきテーマに変換したうえで、「仮説の構築」を行い、マーケティングリサーチで「何を」「どんなふうに」明らかにしていくのかの骨格を作っていきます。
  10. はじめての市場調査:アンケート調査票の作り方は?良い例・悪い例 精度の高いアンケートを作る9つのステップとポイント 2021年05月10日 精度の低いアンケートを行ってしまうと正しい調査結果が得られず、知りたかったことが分からなかったり、間違った結論を導いてしまったりすることがあります。
  11. https://globis.jp/article/5823 アンケートが長くなりすぎるのはもちろんのこと、レイアウトが見づらいとか、ウェブアンケートの場合は操作性が悪いと、答える方が面倒くさくなって、いい加減に答えてしまうことがあります。たとえば、ウェブのスピードが遅く、アンケートで20分以上かかるようなものでは、すべて真面目に答える人は多くありません。
  12. https://www.kcsf.co.jp/marketing/column.html 理想を言えば、設問数は10問~20問程度ではないでしょうか。・最初の数問で、回答者の頭をウォーミングアップ。 (前菜)・その後、やや、本題に近寄りながら、 (スープ)・本題に数問。 (メインディッシュ)・最後は、必要な属性などを確認します。 (デザート)

その他

  1. https://www.marketing-literacy.org/blog/hypothesis-excavation-method/
  2. 課題を把握し、商品・サービスの改善で売り上げを上げるための情報は『顧客』が持っています。「Consumer is Boss」(お客様はボス)はP&G社で徹底されている考え方であり、「ファブリーズ」に代表される徹底的なマーケティング・リサーチ実施による成功例は、まさに好事例と言えます。 https://www.startrise.jp/columuns/view/4179
  3. マーケティングを学ぶ学生たちには、仮説をもつことの重要さを説いています。リサーチの講義においては、そのことはリサーチの位置づけを理解することにもつながるので、とりわけ重要なことと考えています。ここで言う仮説とは、市場における消費者やブランド等の現況に関わる仮説にはじまり、それにもとづいて設定する課題の仮説、さらにはそれを解決するための戦略や施策の仮説まで、すべてを含みます。 https://insight.rakuten.co.jp/knowledge/researchcolumn/vol21.html

分散や標準偏差を計算するときにnで割るべきかn-1で割るべきか

統計の勉強はそうでなくても複雑でとっつきにくいのですが、なかでも初心者を簡単にくじく原因は、分散や標準偏差を計算するときにnで割るべきかn-1で割るべきかという混乱だと思います。授業で習ったことと教科書に書いてあることが違っている、複数の教科書を見てみると定義がまちまち。どうしてこういうことが起きているのでしょうか。まず、分散(やその平方根をとった標準偏差)と一言で言っても、実は分散には種類があり定義が異なるということを知ることが大事です。母分散(母標準偏差)、標本分散(標本標準偏差)、不偏分散(不偏標準偏差)という概念を理解すればすべての疑問は氷解します。分散という言葉が出てきたときには、それが、母分散、標本分散、不偏分散の3つのどれのことを指しているのかがわかれば、nで割ればいいのかそれともn-1で割ればいいのかがわかるわけです。

まず高校の数学を思い出しましょう。分散の定義は何だったかというと、

分散 = (1/n) * Σ (データ-平均値)^2

でした。5人の人のテストの点数がデータ=[100, 85, 30, 50, 60] だとします。

平均値 = (100+85+30+50+60)/5 = 65 点ですので、

分散 = (1/5)* {(100-65)^2 + (85-65)^2 + (30-65)^2 + (50-65)^2 + (60-65)^2 } =620

標準偏差は、分散の平方根なので24.9 点となります。高校のときはこれで何も悩まなかったわけです。

ところが大学に入って統計の勉強をすると、母集団から標本を抽出して、抽出した標本の統計量をもとに母集団の統計量を推定するということをやります。例えば、1000人がテストを受けていたとして、そのうちの5人をランダムに抜き出して(標本)たところ、データ=[100, 85, 30, 50, 60] だったというわけです。そうすると、本当に知りたいのは標本データそのもののの平均値や分散ではなくて、母集団1000人の平均値や分散ということになります。つまり母平均や母分散に興味があるのでそれを推定したいのです。現実的には1000人のテストの点もデータとして入手可能な場合もあるでしょうから、1000個のデータに関して上記の分散の定義で計算することができるでしょう。

しかし、それでは実は知りたいのは日本全国の大学1年生にこのテストをさせたときの点数だったとしたらどうでしょうか。そもそも大学1年生全員はテストを受けていません。受けたのは1000人だけだったとします。そうなると、その1000人が実は「標本」だったと考えることもできます。その場合、母集団のデータは手に入りませんので、標本から推測するしかありません。ここまででわかることは、母集団が何で、標本が何かをはっきりさせない限り、議論ができないということです。そこが曖昧だと、統計の勉強がよくわからないということになります。

研究者が実験して測定を繰り返して測定値の平均値を求めたりするのは日常的な行為ですが、この場合の「母集団」は、実際にはあり得ませんが仮想的に考えて、無限回測定を繰り返したときの測定値の集団です。それに対して、「標本」というのは測定を繰り返して得られた測定値のデータセットになります。

さて話を戻すと、上で求めたのはnで割っているので、標本分散だったということになります。高校数学では標本分散のことを単に分散と呼んでいたわけです。ところが、大学以降は単に分散といえば、不偏分散(母分散の推定値)のことを指すことが多いのです。言葉の意味がいつの間にかすり替わっているのに、誰もちゃんとそれを教えてくれなかったから、統計の学習者はみな混乱させられているというわけです。もっとややこしいのは、日本語の言葉遣いの問題で、標本から計算される不偏分散のことを、標本の分散と呼ぶ本もあるようです。つまりその教科書の日本語の言葉遣いにおいては、「標本の分散」は、「標本分散」ではないというわけ。混乱しない人がいたら、そのほうが不思議なくらいです。

分散や標準偏差を計算するときにnで割るべきかn-1で割るべきかという問いの答えは、母集団の母平均を推定したいので、不偏分散を計算しないといけないのが通常。だから、n-1で割るのが通常ということになります。もちろん標本分散を求めなさいといわれたときにはnで割ります。あるいは与えられたデータは母集団のデータ全てですという場合は、標本分散と同じ定義になるので、nで割ることになります。エクセルで標準偏差を求める関数としてSTDEVというものがありますが、これはn-1で割った値を返してくれる関数です。

研究者が測定データをエクセルに入力してSTDEVという関数で標準偏差を求めて論文報告するというのは一般的だと思いますが、その際に報告しているのは「不偏標準偏差」(つまり母集団の標準偏差の推定値)だったのですね。当然といえば当然のことです。

もし高校生が高校の数学の統計の授業で標準偏差を習い、それをエクセルのSTDEVで計算させたときに、食い違いが生じて混乱させられることでしょう。エクセルでは、母標準偏差や標本標準偏差を求める場合には、STDEVPという関数を使います。要注意なのはpythonで、pythonでは標準偏差や分散はデフォルトではnで割った値を返します。

 

参考

  1. STDEVとSTDEVP―2つの標準偏差 BellCurve統計WEB
  2. パッと見でわかる統計学ノート【分散や標準偏差において n-1 で割る公式の理由】 2016年6月3日 / 2020年2月11日 アタリマエ!
  3. 読めば必ずわかる分散分析の基礎 第2版2003年12月5日 小野 滋
  4. 不偏推定量とは?平均と分散を例に分かりやすく解説 AVILEN TREND
  5. 7 母分散の推定(n-1で割る理由)

 

 

 

 

 

統計学的な手法の選択 2群か3群以上か、パラメトリックかノンパラか、データ間の対応の有無は、‥

実験群と対照群との間の差の有無を検定する統計学的な手法の選択は、慣れないと頭がこんがらがりそうです。考え方の基本となるのは、比べたい量が連続的に変化する量なのか、それとも離散的なデータなのか、また、データが正規分布していることを仮定しているのか(パラメトリック)、仮定しないのか(ノンパラメトリック)、群間のデータに対応があるかないかをしっかりと把握することが検定の手法選びのポイントです。それがわかっていないと、選びようがありません。

 

2群間の比較

パラメトリック

2群のデータに対応が無い場合には、t検定を(ただし等分散でない場合にはウェルチのt検定を)、対応があるデータに関しては、「対応のあるt検定」を用いる。

 

ノンパラメトリック

2群のデータに対応が無い場合には、マン・ホイットニー検定(またはそれと同値の、ウィルコクソンの順位和検定)を、対応があるデータに関しては、ウィルコクソンの符号付順和検定を用いる。つまりt検定のノンパラメトリック版がマン・ホイットニー検定で、ウェルチのt検定のノンパラメトリック版がウィルコクソンの符号付順和検定ということになります。

 

3群以上の間の比較

対照群、実験群(実験条件1)、実験群(実験条件2)といった研究デザインの場合です。

パラメトリック

1-way ANOVA (Analysis of variants 1元配置分散分析):多群間で、平均値が他と異なる群があるかどうかを検定する手法。2群間の比較で使われるt検定の、多群バージョンと考えられる。どの群とどの群の間に差があるのかは、ANOVAではわからないため、ANOVAのあとにチューキーのテストなどを行う。

1-way ANOVA (Analysis of variants 1元配置分散分析)とは

チューキーの検定 (Tukey’s test): 多群間のペアワイズな検定を行う。

ダネットの検定(Dunnett’s test):対照群1つと実験群複数の場合に、個々の実験群を対照群と比較する。

シッフェ(Scheffe)検定:

ボンフェローニ検定:

参考

  1. 杉本典夫『医学・薬学分野で役立つ 統計学の基礎 推定を中心にした統計手法の理論と実践』(プレアデス出版2015年)

ノンパラメトリック

クラスカル・ウォリス検定 (Kruskal-Wallis test):ノンパラメトリック検定の一つ。3群以上の間で、差がある群が存在するかどうかを検定する。どの群とどの群との間に差があるかはわからないので、その場合はSteel-Dwass test(スティール・デュワス検定)などを続けて行う。

Steel-Dwass test(スティール・デュワス検定):ノンパラメトリック検定の一つ。多群の場合に、群間の比較をペアワイズに行う。

 

参考

  1. 理学療法領域における統計解析法の選択 小林 武 理学療法の歩み16巻1号 2005年1月25■講座■ 統計学的手法を選ぶためのフローチャートが見やすい。
  2. 28-4. Welchのt検定 BellCure 統計WEB