医師国家試験 医療面接 medical interview

解釈モデル explanatory model

  1. 解釈モデルとは、患者や医療者が考える病気の原因、病態、経過、病気の影響、望む治療法、期待感などの体系 https://www.quint-j.co.jp/dictionaries/keyword/38067

第117回医師国家試験問題 令和5年(2023年)2月4日(土)、5日(日)

20 62 歳の男性。心窩部痛と食思不振を主訴に来院した。半年前から心窩部痛を感
じることがあったが、仕事が忙しいため様子をみていた。心窩部痛が持続し、2 週
間前から食思不振が出現したため受診した。既往歴に特記すべきことはない。喫煙
歴はない。飲酒は焼酎1 合/日を40 年間。父が胃癌で70 歳時に手術。身長
170 cm、体重52 kg(半年間で8 kg 減少)。体温36.8 ℃。脈拍80/分、整。血圧
128/72 mmHg。眼瞼結膜に軽度の貧血を認める。眼球結膜に黄染を認めない。左
鎖骨上窩に径2 cm のリンパ節を触知する。上腹部に径5 cm の腫瘤があり、圧痛
を認める。腸雑音に異常を認めない。直腸指診で直腸膀胱窩に硬結を触知する。尿
所見: 蛋白(-)、糖(-)、ケトン体1 +。血液所見: 赤血球368 万、Hb 8.9 g/
dL、Ht 32 %、白血球9,300、血小板21 万。血液生化学所見:総蛋白6.5 g/dL、
アルブミン3.1 g/dL、総ビリルビン1.9 mg/dL、直接ビリルビン1.2 mg/dL、
AST 128 U/L、ALT 116 U/L、LD 277 U/L(基準120~245)、ALP 283 U/L(基準
38~113)、-GT 132 U/L(基準8 ~50)、尿素窒素12 mg/dL、クレアチニン
1.6 mg/dL、血糖98 mg/dL、CEA 38 ng/mL(基準5 以下)、CA19-9 98 U/mL(基
準37 以下)。CRP 3.0 mg/dL。上部消化管内視鏡検査で進行胃癌を認めた。頸部・
胸腹部・骨盤部造影CT で、多発肝転移、リンパ節転移、腹膜播種が確認された。
患者に検査結果を伝え、薬物による抗癌治療が標準治療であることを説明したとこ
ろ、「薬ではなく手術で癌を取り除いてもらいたいと思う。家族と相談してきたい
のですが」と申し出た。
対応として適切でないのはどれか。

  • a 胃全摘術を予定する。
  • b 家族同席で再度説明する。
  • c なぜ手術を希望するか尋ねる。
  • d 本人の病状に関する認識を確認する。
  • e セカンドオピニオンについて説明する。

B22 治療薬の効果に関するランダム化比較試験の試験参加について被験者の同意を取
得したとみなされるのはどれか。
a 研究に用いる薬物の服用
b 研究を行う主治医の同意
c 研究施設の倫理委員会の承認
d 施設のホームページでの公示
e 被験者への説明と同意文書の取得

 

B28 82 歳の女性。発熱を主訴に家族に連れられて来院した。誤嚥性肺炎の診断で入
院となった。Alzheimer 型認知症があり、食事のむせこみで頻回の誤嚥性肺炎の既
往がある。肺炎のため2 週間前に入院し、肺炎は改善したがADL が低下したため
現在は全介助の状態である。認知機能障害のため嚥下訓練も進まず胃瘻の造設を検
討することになった。認知症症状が悪化する前には、「ボケるくらいなら死んだほ
うがまし」、「胃に管を入れてまで生きたいと思わない」と発言していたという。息
子は胃瘻を希望しているが娘は反対している。現在、意識は傾眠状態で、呼びかけ
に反応しない。
この患者の胃瘻造設に関する意思決定について適切なのはどれか。
a 患者を介護する家族が決定する。
b 病状説明を行って患者が決定する。
c 患者にとっての最善な治療方法を医療チームが決定する。
d 患者の推定意思を尊重し家族と医療チームが話し合って決定する。
e 院内に設置された委員会が家族と医療チームの意見に基づいて決定する。

B30 40 歳の女性。心窩部痛を主訴に来院した。医療面接で解釈モデルを把握するた
めの質問はどれか。
a 「どうされましたか」
b 「どのような痛みですか」
c 「最近ストレスはありましたか」
d 「このような痛みは初めてですか」
e 「痛みの原因をどのように考えていますか」

 

B38 67 歳の男性。腹部膨満感、右季肋部痛およびふらつきを主訴に来院した。半年
以上前から右季肋部痛を自覚していたが、3 か月前から痛みが増強するとともに腹
部膨満感が出現、1 か月前から黒色の軟便が見られるようになり、2 週間前からふ
らつきが強まった。ここ3 か月で体重が5 kg 減少している。意識は清明だが、問
診の意味が把握しにくいようで、聴覚障害と軽度の知的障害が疑われる。身長
154 cm、体重53 kg。体温35.9 ℃。脈拍84/分、整。血圧112/72 mmHg。呼吸数
13/分。眼瞼結膜は蒼白で眼球結膜に軽度黄染を認める。腹部は膨満しており、波
動を認める。両下腿に強い浮腫を認める。一人暮らしで身寄りがなく、生活保護を
受けている。民生委員が同伴で受診しており、問診の際も民生委員を介して聞き取
りを行ったが、生活状況などについて十分な情報が聴取できない。
まず取るべき対応で正しいのはどれか。
a 医師が患者に代わって診療方針を決定する。
b 診療方針について患者本人に説明し意向を聞く。
c 民生委員を成年後見人とみなして診療方針について相談する。
d 患者本人の意思決定困難を理由にこれ以上の検査治療を行わない。
e 医学的検査の結果に基づき、客観的に治療の適否や内容を決定する。

 

 

次の文を読み、43、44 の問いに答えよ。
38 歳の男性。食欲不振、腰痛および背部痛を主訴に来院した。
現病歴 : 半年前から胸やけと食欲不振、腰痛を自覚していた。2 か月前から背部
痛と呼吸困難が出現し、自宅近くの診療所を受診した。上部消化管内視鏡検査で胃
体部に進行胃癌を認め、精査と治療のため入院となった。腰痛はみられるが、
ADL は自立し歩行可能である。
既往歴 : 特記すべきことはない。
生活歴 : 妻と小学生の娘2 人と4 人暮らし。職業は会社員、営業職で外回りの仕
事が多い。喫煙は20 歳から20 本/日だが、2 週間前から禁煙している。飲酒は機
会飲酒。
家族歴 : 特記すべきことはない。
現 症 : 意識は清明。身長176 cm、体重63 kg。体温36.4 ℃。脈拍92/分、整。
血圧120/64 mmHg。呼吸数18/分。SpO2 97 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜と
に異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾
を触知しない。
検査所見 : 血液所見:赤血球390 万、Hb 9.1 g/dL、Ht 39 %、白血球6,300、血
小板26 万。血液生化学所見:総蛋白5.0 g/dL、アルブミン3.0 g/dL、総ビリル
ビン0.8 mg/dL、AST 16 U/L、ALT 18 U/L、LD 184 U/L(基準120~245)、
ALP 200 U/L(基準38~113)、クレアチニン1.0 mg/dL、Na 141 mEq/L、
K 4.0 mEq/L、Cl 101 mEq/L、Ca 8.5 mg/dL。胸部エックス線写真で両肺に散在
する腫瘤を認めた。腹部CT 及び腰椎MRI で第1 腰椎と第3 腰椎に転移性骨腫瘍
を認めた。肝転移は認めなかった。
患者には病状が詳しく伝えられ、今後抗癌化学療法、放射線治療が計画された。
患者から、「会社に迷惑をかけるので、仕事をやめようか悩んでいる。治療費もた
くさんかかるし、小学生の娘2 人を今後どうやって養っていったらよいかを考える
と心配でしょうがない」と相談があった。

43 この患者への対応で誤っているのはどれか。
a 患者の病状理解を確認する。
b 職場への伝え方を助言する。
c 不安を軽減させるための支援を行う。
d 退職して治療に専念するよう伝える。
e 利用可能な支援制度の情報提供を行う。