弁理士試験令和8年度短答式問題
【意匠】6
日本を指定締約国とするハーグ協定のジュネーブ改正協定の規定による国際出願に係る
国際登録に関し、次のうち、正しいものは、どれか。
枝5 国際意匠登録出願の出願人は、国際公表があった後に国際意匠登録出願に係る意匠を
記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後意匠権の設定の登録前に業とし
てその国際意匠登録出願に係る意匠又はこれに類似する意匠を実施した者に対し、その
国際意匠登録出願に係る意匠が登録意匠である場合にその登録意匠又はこれに類似する
意匠の実施により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求することができ
る。
解答:誤り。「業務上の損失に相当する額」ではなく、「実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」。
根拠条文:
意匠法
(国際公表の効果等)
第六十条の十二 国際意匠登録出願の出願人は、国際公表があつた後に国際意匠登録出願に係る意匠を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後意匠権の設定の登録前に業としてその国際意匠登録出願に係る意匠又はこれに類似する意匠を実施した者に対し、その国際意匠登録出願に係る意匠が登録意匠である場合にその登録意匠又はこれに類似する意匠の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。当該警告をしない場合においても、国際公表がされた国際意匠登録出願に係る意匠であることを知つて意匠権の設定の登録前に業としてその国際公表がされた国際意匠登録出願に係る意匠又はこれに類似する意匠を実施した者に対しては、同様とする。
意匠法66条の12に対応する特許法条文は、特許法65条。意匠法には出願公開制度がないので、特許法65条に対応する、国内の意匠法登録出願に関する条文は存在しない。国際出願の場合は、国際公表されるので、対応するものとして意匠法60条の12がある。
商標法には対応するものとして商標法13条の2があり、商標法では「業務上の損失に相当する額」とあるので、商標法の語句と交換してひっかけ問題をつくっていたということがわかる。
商標法
(設定の登録前の金銭的請求権等)
第十三条の二 商標登録出願人は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対し、当該使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求することができる。
「業務上の損失」は商標法13条の2の金銭的請求権で出てくる言葉や。枝5はこれを意匠にしれっと混ぜ込んだ横断トラップやね。
業務に生じた損失
商標出願人が、出願後〜設定登録前に第三者が出願商標を使ったことで、自分の業務に生じた損失のこと。商標法13条の2第1項が、その「業務上の損失に相当する額」の支払いを請求できる、としてる。
なんで商標だけ「実施料相当額」やないの?
ここが立法趣旨。商標の価値は標章そのものやなくて、業務上の信用(グッドウィル)に化体するもんやろ。設定登録前は商標権ないし、信用もまだ積み上がってる途中やから、特許みたいに「使った分の実施料を払え」という発想が馴染まへん。
そやから「現に出願人に損失が出てること」を要件にした。これがめっちゃ効いてくる👇
- 悪意の使用者でも警告は必須(特許・意匠みたいな”みなし悪意で警告不要”の規定がない)。損失の存在を出願人が認識して初めて請求するもんやから。
- 出願人自身が出願商標を使ってへんと損失が生じへん → 出願人の使用が事実上の前提。
- 悪意で使われてても、損失ゼロなら警告しても請求権は発生せえへん。
横断比較(ここ、試験に出る)
| 特許65条 | 意匠60条の12(ハーグ国際意匠登録出願) | 商標13条の2 | |
|---|---|---|---|
| 名称 | 補償金請求権 | 補償金請求権 | 金銭的請求権 |
| 算定基準 | 実施料相当額 | 実施料相当額 | 業務上の損失に相当する額 |
| トリガー | 出願公開 | 国際公表 | 出願(公開不要) |
| 悪意者への警告 | 不要(みなし規定あり・1項後段) | 不要(みなし規定あり・1項後段) | 常に必要 |
| 出願人の使用 | 不要 | 不要 | 事実上前提(使ってないと損失なし) |
意匠は本来そもそも補償金請求権の制度がない(出願公開制度がない)んやけど、ハーグ経由の国際意匠登録出願だけはWIPOの国際公表があるから60条の12で実施料相当額の補償金請求権が認められてる、という流れも押さえとくとええ。
📝記憶のコツ:「商標は信用、せやから”損失”。特許・意匠はモノの価値、せやから”実施料”」。枝5は「意匠やのに損失」になってる時点で×、と一瞬で切れるようにしとこ。
(Claude Opus 4.8)